2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウシにおけるウイルス抵抗性Mx遺伝子のスプライシング変異による特異的感染防御機構
Project/Area Number |
18380170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 智正 北海道大学, 大学院農学研究院, 教授 (10100174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 秋彦 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (70333359)
鈴木 啓太 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (60261335)
上田 純治 酪農学園大学, 酪農学部, 教授 (50002374)
山田 豊 北海道大学, 大学院農学研究院, 助教授 (80418607)
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Keywords | ウシ / 抗病性育種 / 感染症 / 家畜遺伝 / ウイルス抵抗性 / 自然免疫 / Mx1遺伝子 / 畜産 |
Research Abstract |
わが国においても、ウシ口蹄疫、BSE、トリインフルエンザウイルス症が発生し、社会を震撼させるとともに、畜産業界に多大な損害を与えた。一方、生体には本来病原体の感染に対して防御機構が備わっており、防御の程度には個体差のあることが知られている。この個体差を生ずる遺伝的多様性が科学的に解明されれば、抗病性育種が可能となる。そして、このような抗病性遺伝子の一つにウイルス抵抗性Mx遺伝子がある。そこで、ウシMx遺伝子に関する知見を得る目的で研究を行ない、以下の成果を得た。 ヒト・マウスを含めて哺乳動物には2種類のMx遺伝子があることが知られているが、ウシにおいても同様2種類(Mx1およびMx2)あることを確認した。しかし、ウシMxは、マウス、ブタそしてニワトリと異なり、調べたいくつかの品種間で変異性がきわめて低く、Mx1・Mx2ともに1箇所のアミノ酸置換のみしか検出されなかった。さらに、水疱性口内炎ウイルス(VSV)を用いた感染実験の結果、Mx1・Mx2とともにVSV増殖抑制能力を有していた。このことより、ウシMx遺伝子はウイルスによる自然淘汰を受けながら、アミノ酸置換を伴うことなく分子レベルの保存性を強く保ってきたことものと推測された。 ウシMx1遺伝子に関しては、さらにN末端側に27アミノ酸のみを異にするスプライシング変異体の存在することが確認された。この変異体はMx1Bと命名された。ところが、本研究でMx1BにはVSVに対する抗ウイルス活性が検出されなかった。そこで、このウシMx1Bについてのアミノ酸配列を詳細に検討したところ、Argに富む核移行シグナルの存在が確認された。したっがて、細胞内局在の違いから、Mx1はVSVの増殖を抑制し、Mx1Bにはその能力のないことが予測された。MxにGFP遺伝子を連結させ、緑色蛍光を指標に観察したところ、確かにMx1は細胞質に、Mx1Bは核におよび核周縁部に検出された。
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