2008 Fiscal Year Annual Research Report
アディポ・免疫サイトカインを介する乳腺組織形成とその乳房炎、乳癌における役割
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18380172
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 和弘 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 教授 (30192561)
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Keywords | レプチン / HGF / heregulin / 乳腺 / 乳癌 / 上皮間質相互作用 / 間質脂肪細胞 / 性ホルモン |
Research Abstract |
乳腺導管は生後から思春期にかけて皮下脂肪組織内に伸長し、妊娠後に腺房が発達して泌乳を開始する。食餌性肥満が泌乳量を抑制し泌乳期間を短縮することがヒトやマウスなどで報告されているが、そのメカニズムや妊娠以前の乳腺導管発達に対する肥満の影響は知られていない。そこで我々は食餌性肥満が乳腺導管の発達に与える影響を形態学的に解析した。4週齢メスのC57BL/6Jマウスを2群に分け、高脂肪食(HFD)あるいは通常食(ND)を20週間給餌した後、腹部乳腺(腹部皮下脂肪組織)を採取した。HFD群はND群に比して顕著な肥満、高レプチン血症を呈し、腹部乳腺重量はおよそ4倍に増大した。乳腺ホールマウント標本を用いて導管の形態を定量的に観察したところ、導管は両群とも複数の枝分かれをもって脂肪組織全体に伸長していたが、導管先端部の太さと分岐頻度は食餌性肥満によって有意に減少した。さらに乳腺薄切標本を用いて組織学的解析を行なった.乳腺導管は管腔側の上皮細胞と基底側の筋上皮細胞からなり、その外周は基底膜、膠原線維層、脂肪細胞の順で間質に取り囲まれている。HFD群では脂肪細胞の肥大と導管周囲線維層の肥厚、および筋上皮細胞の減少といった異常が認められた。食餌性肥満は妊娠以前の乳腺導管発達を抑制することが明らかとなり、これが妊娠後の腺房形成や泌乳の低下につながると考えられた。乳腺導管の発達制御には実質と間質をまたぐ局所的な細胞間相互作用が必要であり、我々は既にレプチンが乳腺上皮細胞の形態形成を直接抑制することを示している。つまりレプチンを初めとする肥満により変化する脂肪細胞分泌因子が、線維芽細胞や筋上皮細胞の機能に変化を与えた結果、乳腺導管の発達を間接的に抑制した可能性が示された。
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Research Products
(3 results)