2006 Fiscal Year Annual Research Report
ザゼンソウの発熱現象における新規UCP分子の機能解析
Project/Area Number |
18380196
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 信幸 岩手大学, 農学部, 教授 (40191556)
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Keywords | 発熱植物 / ザゼンソウ / ミトコンドリア / 脱共役タンパク質 / SfUCPB |
Research Abstract |
一般に、植物の体温は外気温の変化とともに変動するものと考えられているが、驚くべきことに、ある種の植物には、自ら発熱し、その体温を積極的に調節できるものが存在する。例えば、我が国の寒冷地に自生し、早春に花を咲かせるザゼンソウ(Symplocarpus foetidus)は、氷点下を含む外気温の変動にも拘わらずその発熱器官である肉穂花序の温度を20℃内外に維持できるサトイモ科の発熱植物である。本研究においては、ザゼンソウの熱産生を制御する因子として、哺乳動物の非ふるえ熱産生に密接に関わっている脱共役タンパク質(UCP)に着目した研究を行った。 従来、動物等で報告されているUCP分子は、6個の膜貫通ドメインを有していることが知られているが、ザゼンソウの発熱性肉穂花序から同定されたUCP分子(SfUCPBと命名)は、その第5番目の膜貫通ドメインが特異的に欠失した新規の分子構造を有していた。そこで、出芽酵母(UCP分子を有しない)においてザゼンソウ由来SfUCPB分子を発現させたところ、その発現量は対照として用いたラットUCP1のおよそ20分の1程度であったが、当該分子の機能の場であるミトコンドリアにターゲットされることが明らかとなった。さらに、フローサイトメーターを用いたミトコンドリア膜電位の解析により、SfUCPBを発現している出芽酵母においては、同分子が脱共役活性を有していることが判明した。また、SfUCPB蛋白質のin vitro合成を行い、数十マイクログラムオーダーで合成可能なシステムの構築に成功すると共に、HPLCによる同蛋白質の精製を行い、次年度以降の機能解析の進展のための重要な足がかりを得た。また、シロイヌナズナにおける同蛋白質の発現系の構築については、アグロバクテリウムを介したFloral dip法により遺伝子導入を行い、過剰発現体の選抜を進めているところである。一方、リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクターを用いたUCP遺伝子のサイレンシング効果を明らかにするための実験として、シロイヌナズナを用い、UCP遺伝子の特定領域をPCRで増幅後ALSVベクターに導入し、同遺伝子のサイレンシングの程度を解析したところ、mRNAレベルにおいて有意な遺伝子発現の抑制が起こっていることが明らかとなり、同実験系はザゼンソウ由来SfUCPBの機能解析等を行う上で有用であることが判明した。これらの結果の一部は原著論文として発表するとともに(Ito et al.,2006)、関連する論文を現在投稿中である。
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Research Products
(4 results)