2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上杉 志成 Kyoto University, 化学研究所, 教授 (10402926)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / ケミカルジェネティクス / 生理活性小分子化合物 / 標的タンパク質 / 肝臓がん / 脂肪合成 |
Research Abstract |
研究代表者の研究室では、生理活性を持った有機化合物を、合成化合物ライブラリーから見つけてきた。本研究の目標は、それらの化合物のうちで極めてユニークな二つの合成化合物、クロメセプチンとファトスタチンを起爆剤として、がんや代謝疾患などに関係する細胞内シグナルを発見することである。研究は計画通り進行している。平成19年度の研究成果を以下に要約する。 ・クロメセプチンはインスリン様成長因子を過剰発現する肝臓癌細胞の増殖を選択的に阻害する。このクロメン誘導体がMFP2に結合すると、STAT6という転写因子が特異的に活性化され、インスリンやIGFのシグナルを阻害するタンパク質が発現されることがこれまでの研究でわかっている。MFP2に結合するタンパク質を精製・同定し、MFP2はクロメセプチンに結合したときのみ、代謝酵素Xに結合することが分かった。細胞内で、この代謝酵素Xはクロメセプチンにより阻害され、代謝物質Yを蓄積させる。これが引き金となって、リン酸化酵素Zが活性化し、STAT6がリン酸化・活性化される。このような「クロメセプチン経路」が明らかとなってきた。 ・ファトスタチンは細胞内での脂肪合成を阻害する。このチアゾール誘導体は、SREBP転写因子の活性化を選択的に阻害することがこれまでの研究でわかっている。ビオチン化ファトスタチンを用いて、ファトスタチンの標的タンパク質精製・同定を行ったところ、小胞体膜に存在するタンパク質Xが標的であることが判明した。この膜タンパク質にファトスタチンが結合すると、SREBPが小胞体からゴルジ体・核へ移行できなくなる。これにより、SREBPの移行が阻害され、脂肪合成酵素が発現しなくなる。
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