Research Abstract |
平成20年度は,(1)メチル水銀曝露による内皮細胞の機能異常,(2)メチル水銀に対する周皮細胞の感受性,および(3)メチル水銀中毒ラット脳組織におけるプロテオグリカンの発現,に関する研究を遂行し,以下の結果を得た。【メチル水銀曝露による内皮細胞の機能異常】細胞培養系を用いた昨年度までの検討によって, FGF-2システムがメチル水銀による脳微小血管の機能障害とそれに続く浮腫の形成に関わることが示唆された。そこで,培養ヒト脳微小血管内皮細胞についてこれを検討し, FGF-2システムを構成するFGF-2タンパク質, FGF2レセプター,及びパールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカンの大型分子種)コアタンパク質についてその発現を調べたところ,メチル水銀がFGF-2タンパク質の発現を選択的に抑制し,その結果,内皮細胞の増殖が抑制され,傷害後の修復過程が遅延することが示された。【メチル水銀に対する周皮細胞の感受性】周皮細胞は細胞密度が低いときにメチル水銀に対して高い感受性を示した。そのメカニズムについて検討し,毒性防御系には細胞密度による違いは認められないが,アミノ酸トランスポーターのひとつLAT-1の発現が細胞密度の低い周皮細胞で上昇しており,それによってメチル水銀が細胞内に多量に輸送されることが分かった。【メチル水銀中毒ラット脳組織におけるプロテオグリカンの発現】以上の培養細胞を用いた実験と併行して, in vivoにおけるメチル水銀曝露とプロテオグリカンの発現を検討した。その結果,メチル水銀中毒ラットの大脳及び小脳ではプロテオグリカンの発現低下は認められず,むしろ増加しているように観察された。しかしながら,そのような変化が分子種に非選択的に観察されたので,細胞外マトリックスの形成阻害の結果である可能性を引き続き検討する必要がある。
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