2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲野 徹 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (00172370)
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Keywords | 幹細胞 / ES細胞 / シグナル伝達 / 血液細胞 / 細胞分化 / リプログラミング / 再生医学 |
Research Abstract |
幹細胞の未分化性維持、ならびに、幹細胞システムにおける分化制御を明らかにするため、以下の実験をおこなった。 1)Aktシグナルの胚性幹細胞(ES細胞)未分化性維持に関する研究 マウスES細胞は、LIF(leukemia inhibitory factor)により、その未分化性が維持される。セリン・スレオニンキナーゼの一つであるAktをES細胞において活性化させたところ、LIFなしでも未分化性が維持されることを見いだした。また、Aktにより未分化性が維持されたES細胞も、その多能性を消失しないことも明らかにした。これらの成果は、Aktシグナルが幹細胞の未分化性維持に機能することを示している。 2)GATA-1欠損による細胞分化リプログラミングに関する研究 GATA-1は、赤血球系に特異的に発現する転写因子である。GATA-1を欠損するES細胞を、OP9ストロマ細胞上において共生培養し、赤血球系に分化誘導したところ、前赤芽球に類似した性質を示す赤血球系細胞が長期間にわたり増殖することが明らかとなった。 このGATA-1欠損前赤芽球に、顆粒球・マクロファージ刺激因子(GM-CSF)を添加したところ、好中球・マクロファージに分化することが明らかとなった。また、インターロイキン3(IL-3)を添加したところマスト細胞に分化することがわかった。一方、巨核球系やリンパ系への分化は認められなかった。 これらの結果から、細胞の終末分化に必須な転写因子を欠損させることにより、終末分化直前の細胞にも、自己複製能と多分化能を賦与できることが明らかとなった。この成果は、体内において比較的大量に存在する細胞を再生医学に利用できる道を切り開くものである。
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