2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390088
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲野 徹 Osaka University, 生命機能研究科, 教授 (00172370)
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Keywords | 幹細胞 / ES細胞 / シグナル伝達 / 血液細胞 / 細胞分化 / リプログラミング / 再生医学 |
Research Abstract |
幹細胞の未分化性維持、ならびに、幹細胞システムにおける分化制御を明らかにするため、以下の実験をおこなった。 1)Aktシグナルの胚性幹細胞(ES細胞)未分化性維持に関する研究 マウスES細胞と体細胞を融合させると、体細胞の核が初期化されることが知られている。セリン・スレオニンキナーゼの一つであるAktをES細胞において活性化させたところ、細胞融合による初期化効率が著しく上昇することを見いだした。また、このようにして得られた融合細胞も、その多能性を消失しないことも明らかにした。これらの成果は、Aktシグナルが幹細胞の未分化性維持に機能することを示している。 また、体細胞を未受精卵に移植することによっても、体細胞の核が初期化されることが報告されている。Aktの、体細胞核移植の初期化における機能を解析したところ、細胞融合による初期化とは逆に、初期化効率が低下することが明らかとなった。 2)GATA-1欠損による細胞分化リプログラミングに関する研究 GATA-1は、赤血球系に特異的に発現する転写因子である。GATA-1を欠損するES細胞を、OP9ストロマ細胞上において共生培養し、赤血球系に分化誘導したところ、前赤芽球に類似した性質を示す赤血球系細胞が長期間にわたり増殖することが明らかとなった。また、この前赤芽球様細胞は、好中球・マクロファージに分化することが明らかとなった。さらに、この分子機構を詳細に検討したところ、特定のサイトカイン受容体の発現におけるエピジェネティック状態に大きな違いのあることが明らかとなりつつある。 本研究は、細胞分化特異的な転写因子がエピジェネティック制御を介して細胞分化を制御するモデルシステムとしてきわめて有用であることが明らかとなった。
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