2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390097
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90332650)
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Keywords | サイトカイン / 認知行動 / EGF / IL-1 / 統合失調症 / 自閉症 / 脳発達 |
Research Abstract |
統合失調症、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症は人口の約0.3〜1%が罹患する重大な精神疾患であるが、その原因はほとんど判っていない。遺伝のほかに発達中の環境因子、母体ウイルス感染や周産障害、出産時虚血、幼児ストレスなどに伴う脳内炎症関与すると言われている。本計画では、炎症性サイトカインによる脳発達の障害の実態を分子・細胞レベルで特定し、そのメカニズムを明らかにすることである。本年度は3つの目標に対し以下の成果を得た。 (1)炎症性シグナルを介してシナプスの形成・成熟を阻害する。 血中インターロンキン1(IL-1)は、ラット生後直後において帯状回、臭内皮質を中心に未熟な脳血液関門を数時間かけて通過し、脳内マイクログリアの活性化、アストロサイトの増殖を引き起こしうることが判明した。また、この炎症反応により、ドパミン合成が上昇し、ドパミン受容体のダウンレギュレーションが生ずることがわかった。 (2)神経栄養シグナルと介してドパミン神経の過剰発達を誘発する。 胎児からの培養中脳ドパミンニューロンや生後のその細胞は、上皮成長因子に反応してAMPA型グルタミン酸受容体の発現量とその膜興奮性を上昇させ、ドパミン神経のシナプス出力を増大させることが判明した。この事実は、統合失調症のドパミンの過剰活動仮説と矛盾しない。 (3)細胞増殖シグナルを介して、GABA抑制神経の機能が低下する。 上皮成長因子ファミリーによるErbB1受容体の活性化は、発達中の大脳皮質のGABA神経に作用し、そのAMPA型グルタミン酸受容体の発現量やGAD67酵素を低下させ、さらにGABA含量とその興奮性を抑制することが判明した。今後、中脳部のGABA神経への作用とも比較して、ErbB1受容体の活性化がいかに抑制性神経伝達の機能障害に寄与している可能性を探求する計画である。
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Research Products
(2 results)