2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390097
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 Niigata University, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 寿明 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90332650)
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Keywords | サイトカイン / 統合失調症 / 自閉症 / 上皮成長因子 / ニューレグリン / 脳発達 / プレパルスインヒビション / プロスタグランジン |
Research Abstract |
発達性の精神疾患は統合失調症、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症などを指し、人口の約0.3〜1%が罹患する重大な精神疾患である。遺伝のほかに発達中の環境因子、母体ウイルス感染や周産障害、出産時虚血、幼児ストレスなどに伴う脳内炎症関与すると言われている。本計画では、炎症性サイトカインによる脳発達の障害の実態を分子・細胞レベルで特定し、メカニズムを明らかにすることである。本年度は3つの目標に対し以下の成果を得た。 (1) 脳内の上皮成長因子シグナルは、プロスタグランジンを介してドーパミン神経活動を調節する。 EGFを成熟したラットの脳内(線条体)に慢性投与してやると、ドーパミンの合成と代謝が亢進するとともに、プレパルスインヒビションやラテント学習などの行動異常が誘発されることを見出した。プロスタグランジン合成酵素(COX-2)の選択的阻害剤であるセレコキシブを経口投与したところ、プレパルスインヒビション、ラテント学習能ともに、正常方向に大きく改善が見られた。 (2) 上皮成長因子シグナルの遮断活性を有するエモジンには、抗精神病薬の活性があれる。 統合失調症モデルである新生仔海馬障害ラットと新生仔EGF投与ラットは、多くの認知行動変化を示す。EGF阻害活性を有するといわれている漢方薬成分のエモジンの抗精神病薬活性について、本モデルを用いて評価した。これらモデルはプレパルスインヒビションの低下を示すが、エモジンの5日以上の慢性投与は、この指標を改善した。 (3)ニューレグリン1は、脳発達過においてGABA抑制神経の機能を上昇させる。 ニューレグリン1投与によるErbB 4受容体の活性化は、発達中の大脳皮質のGABA神経に作用し、そのAMPA型グルタミン酸受容体の感受性を上昇させ、その興奮性を亢進させることが判明した。
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