2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト甲状腺髄様がん癌抑制遺伝子としての野生型N-ras遺伝子
Project/Area Number |
18390101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 智聡 Kyoto University, 医学研究科, 准教授 (50283619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
シャムマ アワド 京都大学, 医学研究科, 助教 (50402839)
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Keywords | がん遺伝子 / がん抑制遺伝子 / ras / セネセンス / 悪性化 / Rb / ノックアウトマウス / 甲状腺髄様癌 |
Research Abstract |
Rbパスウェイの異常は、ヒト発癌において頻繁に観察される。Rbヘテロ型欠損マウスは、脳下垂体中葉細胞と甲状腺C(カルシトニン産生)細胞において、正常アレルの体性欠損により、それぞれ、下垂体腺癌(悪性)、C細胞腺腫(良性)を生じる。このマウスでN-ras遺伝子を追加欠損すると、Rb欠損C細胞腺腫が悪性転換し、高率に肝転移する。RbN-ras二重ヘテロ型マウスに生じたC細胞腫では、Rbの正常アレル欠損に続いて、N-ras遺伝子座のLOHと悪性化が観察された。特定の遺伝学的背景において、N-rasが、がん抑制遺伝子様の挙動を示したということだ。本研究は、まず、N-rasの癌抑制作用の本態を明らかにすること、そして、ヒトのC細胞癌に該当する甲状腺髄様がん、とくにret癌遺伝子異常の比較的少ない散発性の症例で、N-ras遺伝子の異常を見いだすことが出来るかを検討することを主眼とした。N-ras野生型のRb欠損C細胞腺腫を詳細に解析したところ、多種のDNA損傷応答因子と、セネセンスマーカーの発現を観察した。これらはことごとく、N-rasホモ型マウスから生じた腫瘍では、発現消失していた。Rbパスウェイの異常は、ヒト発癌にほぼ必須のイベントだが、Rb遺伝子自身の突然変異は、限定された種類の癌でしか見つからない。我々の発見は、Rb遺伝子の失活が、N-ras依存的に、DNA損傷応答、セネセンスを誘導することにより、腫瘍が完全に癌化することを妨げることを示唆した。これは、癌化に対抗する重要な生体防御機構のひとつと考える。一方で、ヒト癌の解析では、解析に適した品質の標本の入手が遅延し、H18年度予算繰り越しの原因となった。倫理委承認のもと、ようやく、東京女子医大内分泌外科より、約20症例の提供を受け、免疫組織学的な解析を開始、ゲノム解析の為の予備的データを蓄積した。
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