2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス性脳疾患の克服:パターン認識受容体RAGEの機能に基づく新戦略の構築
Project/Area Number |
18390139
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
安居 輝人 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (60283074)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 持続感染 / 中枢神経系 / S100B / RAGE |
Research Abstract |
ウイルス性脳疾患の発症には中枢神経系(CNS)でのウイルスの持続感染が深く関わっていると考えられる。これまでの研究により、CNSでの持続感染の成立には、ウイルス側の複製調節に加え、宿主脳内のさまざまな因子が重要な役割を果たしていることが示されている。研究代表者は、ボルナ病ウイルス(BDV)感染をモデルに、ウイルス持続感染の成立に関わる脳内因子と脳内免疫の活動を総合的に解析してきた。その結果、BDVが感染した脳内では、持続感染の成立に伴い、糖化最終産物受容体(RAGE)の脱活性化が誘導されることを明らかにした。パターン認識受容体であるRAGEは、自然免疫活動の長期化や炎症反応の増幅にも関与しており、BDVはRAGEの活性化を抑制することで、宿主免疫の攻撃から逃れると同時に、持続感染の成立を図っていると示唆された。そこで、本研究では、CNSにおけるRAGEの機能を詳細に解析し、その制御に基づいた神経ウイルス感染症の克服、ウイルス性脳炎とウイルス増殖の抑制を目指すものである。本年度は、RAGEのリガンドであり、炎症反応の増幅に関与しているS100B動態について、BDV感染ラットを用いて解析を行った。その結果、BDV接種後5週目のラット脳ではS100Bの発現抑制が観察された。また、LPSの接種によっても、S100BとRAGEの発現上昇は認められず、BDV持続感染脳ではS100Bの機能が恒常的に抑制されていることが示唆された。S100Bの発現低下が認められた脳では、ミエリン蛋白質の接種によっても実験的自己免疫脳炎は誘導されないことが明らかとなった。これらの結果より、BDV感染は脳内でのS100Bの発現とその活性化を抑制して、細胞浸潤を伴う過剰な脳炎反応を制御することで、宿主免疫の攻撃から逃れているとともに、持続感染を成立させていると考えられた。
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Research Products
(5 results)