2007 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロンの生死を決定づけるカチオンチャネルの機能に関する研究
Project/Area Number |
18390166
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 周司 Kyoto University, 薬学研究科, 教授 (60177516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 久志 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50402798)
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Keywords | TRPチャネル / 神経細胞死 / グリア細胞 / カルシウムイオン / イオンチャネル |
Research Abstract |
平成19年度は、まず初めに中枢神経系を構成するグリア細胞の一種であるアストロサイトの細胞内Ca2+動態変化およびTRPチャネルの遺伝子変動について検討を行った。脳内出血時に漏出する血液凝固因子であるthrombinを初代培養アストロサイトに適用すると、突起を持つ星状形態から、突起を持たない扁平形態への変化が誘導され、また特異的かつ顕著なTRPC3の発現上昇が観察された。このTRPC3発現増加は転写因子NF-κB阻害薬の適用により抑制され、Ca2+シグナリングおよびTRPC3自身の活性にも依存していることが明らかとなった。TRPC3に対するsiRNAを導入したノックダウン細胞ではthrombin誘発形態変化が阻害され、同濃度のthrombinを72時間処置した際に観察される細胞増殖作用はCa2+動態阻害薬によって有意に抑制された。アストロサイト活性化の指標であるS100βの発現上昇はCa2+動態阻害薬およびTRPC3ノックダウンにより消失した。以上の結果は、脳内出血などの病態時にみられる異常形態や異常増殖を伴うアストログリオーシスに、TRPC3を介したCa2+シグナリングが寄与していること、およびアストロサイトの病態の進行にTRPC3がフィードフォワードな自己発現制御を伴いながら関与していることを強く示唆するものである。 次に前年度in vitro実験系を用いて脳虚血関連事象における神経細胞死を媒介することが示されたTRPV1の脳虚血傷害における関与を明らかにすべく、in vivo実験系における検討を行った。TRPV1阻害薬であるcapsazepineは、ラットおよびマウス中大脳動脈一過性閉塞モデルにおける神経学的症状のスコアおよび梗塞巣の形成を顕著に抑制した。またTRPV1+/-マウスにおいても野生型と比較して梗塞巣の形成が有意に抑制され、これらの結果を踏まえるとTRPV1が脳虚血傷害の発生過程において中心的な役割を担っていることが強く示唆される。
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Research Products
(15 results)