2006 Fiscal Year Annual Research Report
尿中ジアセチルスペルミンの腫瘍マーカーとしての多能性および汎用性の研究
Project/Area Number |
18390176
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
平松 恭子 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (80181189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川喜田 正夫 工学院大学, 工学部, 教授 (00012740)
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Keywords | polyamine / tumor maker |
Research Abstract |
ポリアミンは、細胞増殖と深く関連している物質であり、腫瘍マーカーとしての応用の可能性が長年検討されてきたが、尿中総ポリアミンに関する限りその臨床的評価は低く、現状ではほとんど利用されていない。 我々はHPLC法によるポリアミンの分画測定法を確立し、ヒトの尿中の微量ポリアミン成分N^1,N^<12>-diacetylspermine(DiAcSpm)が、癌の病態とよく相関する指標であることを見出した。我々はさらに、DiAcSpm特異抗体の調製に成功してELISA法を確立し、DiAcSpmを腫瘍マーカーとして確立すべく、その性能について検討を進めている。本研究においては、大腸癌、乳癌を中心に検討した結果、いずれについてもDiAcSpmの陽性率は既存マーカー(CEA, CA19-9, CA15-3)より高いことを明らかにした。特に大腸癌において、DiAcSpmは早期大腸がんに対して60%の高い陽性検出率を示すことが明らかになった。これは、便潜血検査と匹敵する高い感度であり、注目すべき結果である。また、尿中DiAcSpmレベルは治療効果を反映して低下する一方、再発に伴って上昇する傾向があり、大腸癌の病勢をよく反映した変動を示すことも示唆された。我々はこのことに注目し、現在多数の大腸癌患者の長期にわたる経過観察を行なっている。本年度はさらに、尿中DiAcSpm値が大腸癌患者の予後とよく関連することを示唆する結果を得ることができた。すなわち、手術前の尿中DiAcSpm値が基準値未満であった約25%の偽陰性の患者が1.5年以内に予後不良となるケースはきわめて少ない一方、手術後0.5年の時点でDiAcSpm値が基準値の3倍を超えていた患者の予後は、非常に悪かった。これらの結果は、尿中DiAcSpmが、特に早期癌の診断に有用なマーカーであるだけでなく、治療効果の有効性や再発・転移の指標、患者の予後の指標としても有用な多能性の新規腫瘍マーカーとして臨床上大きな利用価値をもつことを示している。
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Research Products
(1 results)