2006 Fiscal Year Annual Research Report
感染・炎症関連発がんのリスクを評価する新規バイオマーカーの解析システムの開発
Project/Area Number |
18390179
|
Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10025637)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 真理子 三重大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10171141)
及川 伸二 三重大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (10277006)
平工 雄介 三重大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30324510)
足立 幸彦 三重大学, 大学院医学系研究科, リサーチアソシエイト (50111026)
|
Keywords | 感染 / 炎症 / 発がん / DNA損傷 / 8-ニトログアニン / 活性窒素種 / リスク評価 / バイオマーカー |
Research Abstract |
感染症および慢性炎症は極めて重要な発がん因子であり、感染・炎症関連発がんのリスクを早期に評価する方法の確立が急務である。炎症条件下では炎症細胞や上皮細胞から活性酸素・窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々はニトロ化ストレスによるDNA損傷の乗り越え修復が突然変異に関わる可能性を示した(Cancer Res.2006)。また我々は免疫組織学的手法を用いて、種々の臨床検体や動物モデルにおいて8-ニトログアニンが発がんと関連して生成されることを世界に先駆けて明らかにした(Biol Chem 2006, Antioxid Redox Signal 2006)。胆管癌を起こすタイ肝吸虫に感染したモデル動物では、肝内胆管上皮で8-ニトログアニンが生成され、抗寄生虫薬によりほぼ完全に抑制された(Int J Cancer 2006)。口腔前癌状態である白板症患者の生検標本では上皮細胞に8-ニトログアニン生成を認め、口腔発がんにニトロ化ストレスが関与する可能性を初めて示した(Nitric Oxide 2006)。ヒトパピローマウイルス感染による子宮頸部異形成患者の生検標本では、異形成細胞に明瞭な8-ニトログアニン生成を認めた(Cancer Sci in press)。さらに、軟部肉腫患者においてはがん組織で強く8-ニトログアニンが生成され、患者の生存期間の短縮と有意に相関するという極めて注目すべき知見を得た(Cancer Sci 2007)。以上の結果から、8-ニトログアニンが病因に関わらず発がん好発部位に蓄積することを解明した点は極めて興味深い。8-ニトログアニンは感染・炎症関連発がんのリスクのみならず、患者の予後をも評価できる有用な新規バイオマーカーとして応用出来る可能性が期待できる。
|