2006 Fiscal Year Annual Research Report
炎症反応による記憶機能分子かく乱に着目した化学物質に過敏な動物モデルの作成
Project/Area Number |
18390189
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
藤巻 秀和 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (00124355)
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Keywords | 化学物質 / 記憶分子 / 炎症反応 / 動物モデル / 神経伝達物質 |
Research Abstract |
今年度は、大脳辺縁系と免疫系における過敏状態を探るためのモデルを構築するため、低濃度トルエン曝露による記憶にかかわる炎症反応についてマウスを用いて解析した。トルエンは、鼻部曝露装置を用いて、0,1,2,7,14,21,28日にそれぞれ30分間曝露した。曝露濃度は、0,9,90ppmで行った。免疫系の活性化のために卵白アルブミン(OVA)抗原刺激を、0(OVA腹腔内投与)、14(OVAエアロゾル投与),28(OVAエアロゾル投与)日に行った。8日目と最終曝露翌日(29日目)に試料採取をおこなった。 その結果、8日目では大きな変化はみられなかったが、29日目の肺における炎症細胞の集積では、9ppm曝露群でマクロファージ数の有意な増加がみられたが、好中球や好酸球においては有意な変化はみられなかった。リアルタイムPCRによるmRNAの発現解析では、9ppm曝露群でのIL-5mRNA発現の増加、90ppm曝露におけるIFN-γmRNA発現の低下が認められた。IL-4とIL-12mRNAsの発現に差はみられなかった。抗原特異的IgEとIgG1抗体価においては、90ppm曝露では差はみられなかったが、9ppm曝露において有意な増加を認めた。ところで、神経の成長、分化に働き肺における炎症にもかかわる神経栄養因子について肺での働きを検索すると、NGF,NT-3においては発現に変化はみられなかったが、BDNFmRNA、及びNGF受容体TrkAmRNAの発現低下がみられた。海馬における記憶関連遺伝子の発現は、9ppmトルエン曝露で、NMDA受容体NR2AmRNA,CaMKIVmRNA,及びCREB1mRNAの発現増強が認められた。 これらの結果より、トルエンの低濃度曝露が、抗原刺激をうけたマウスの獲得免疫系をより活性化するとともに、肺における神経栄養因子の調節系、海馬における記憶関連遺伝子の制御系をかく乱していることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)