2008 Fiscal Year Annual Research Report
地域づくり型自殺予防対策の有効性に関する研究-ソーシャルキャピタルモデルの構築
Project/Area Number |
18390193
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
本橋 豊 Akita University, 医学部, 教授 (10174351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 善博 秋田大学, 医学部, 准教授 (70344752)
佐々木 久長 秋田大学, 医学部, 准教授 (70205855)
湯浅 孝男 秋田大学, 医学部, 教授 (90241679)
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Keywords | 地域づくり / ソーシャル・キャピタル / 自殺対策 / 心の健康づくり / 抑うつ |
Research Abstract |
個人レベル要因とコミュニティーレベル要因を独立して検討するために、多重レベル分析の手法を用いて分析し、コミュニティーレベルのソーシャル・キャピタルの認知的要因が個人の抑うつ度に影響を及ぼしているかどうかを明らかにした。秋田県内2町の128地区に住む30〜69才の全住民(16,908人)を対象として「心の健康づくり基礎調査」(自記式質問紙)を実施した。(回収14,184人)個人の抑うつ尺度得点の高さは, 地域のソーシャル・キャピタルの低さ(p=0.009)と関連していた。また, 個人レベルの調整因子である男性(p<0.001), 年齢の高さ(30歳代に対し, 40, 50, 60歳代でいずれもp<0.001), 教育歴の多さ(義務教育に対し, 高卒, 専門学校修了, 短大卒, 大卒以上でいずれもp<0.001)も関連していた。結論として、地域の認知的ソーシャル・キャピタルが個人の抑うつ状態と関連することが, 性別, 年齢, 学歴などの抑うつに強い影響を持つ個人の要因を調整しても示された。 1980年代から理論的に提唱されてきたソーシャル・キャピタル論は、地域の活性化や地域の社会課題の解決への一つの方向性を示している。自殺対策の推進の基礎的理論としてソーシャル・キャピタルモデルの構築を本研究で行った意義はここにある。秋田県で行われてきた地域密着型、住民参加型の自殺対策モデルにより、秋田県の自殺者数は毎年約24人減少することが明らかになった。秋田県の自殺対策モデルはソーシャル・キャピタルモデルとして解釈できることから、地域の自殺対策の推進におけるソーシャル・キャピタルモデルの有用性が本研究で検証されたと考える。秋田県が2000年以来重視してきた総合的な地域づくり型自殺予防対策が有効性を示したことは、何よりも自殺対策におけるソーシャル・キャピタルの重要性を根拠づけるものと考えられる。
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