2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18390217
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 健 Kobe University, 医学部, 教授 (60221040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 優 神戸大学, 医学系研究科, 助教 (00419475)
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Keywords | Helicobacter pylori / 胃癌 / CagA |
Research Abstract |
H. pyloriが胃粘膜上皮細胞に接着すると、4型分泌装置がH. pyloriの細胞膜から上皮細胞膜へ針をさすように突き刺さり、その内腔を通してCagAがH. pyloriから胃粘膜上皮細胞内へと注入される。上皮細胞内に注入されたCagAは上皮内でチロシンリン酸化を受け、チロシンリン酸化されたCagAが、細胞の増殖や分化に重要な役割を担うSrc homology phosphatase-2(SHP-2)と結合する。したがって、CagAを有するH. pyloriの感染は、胃粘膜上皮細胞内のシグナル伝達系を刺激し細胞増殖刺激作用を示すことが示唆された。今回、cagAトランスジェニックマウスを作製し、経時的変化を検討したところ、生後12週に胃・小腸粘膜に過形成が生じ、生後72週には8.3%に胃・小腸に過形成ポリープ、1.8%に胃・小腸癌が発症した。しかも、このトランスジェニックマウスでは粘膜に炎症が認められず、CagAの作用だけで発癌することが示された。さらに、興味深い点は、全身に発現させるために作製したチキンβアクチンとグロビン遺伝子の融合プロモーターを用いたトランスジェニックマウスでは、72週でリンパ腫や白血病が発症した。これまでに、SHP-2は骨髄系およびリンパ系細胞の発育に必要で、小児の白血病でSHP-2遺伝子の変異が報告されており、CagAが骨髄およびリンパ系細胞に発現しSHP-2と結合することにより、SHP-2の本来の機能が損なわれリンパ腫や白血病が発症してきたと考えられる。 したがって、H. pylori感染による胃発癌にはH. pyloriのCagAがoncoproteinとして作用していることが考えられた。
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