2006 Fiscal Year Annual Research Report
疾患プロテオミクスを用いた肝癌におけるアポトーシス抵抗性の分子基盤の解明
Project/Area Number |
18390219
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐々木 裕 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70235282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 令江 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 講師 (80253722)
永濱 裕康 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教 (60381000)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
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Keywords | アポトーシス抵抗性 / プロテオーム解析 / 肝癌 / トランスクリプトーム解析 |
Research Abstract |
癌細胞の生物学的特性の一つである「アポトーシス抵抗性」は、「免疫監視機構からの回避」、「抗がん剤に対する薬剤耐性」、「放射線治療抵抗性」などの一翼を担い、さまざまな癌治療法に対する抵抗性の主因となっている。このような「アポトーシス抵抗性」に関わる責任分子を解析同定するためには、遺伝子解析(ゲノム、トランスクリプトーム解析)と同時に、蛋白質発現やその機能に関与する翻訳後修飾の情報を得るプロテオーム解析が重要である 本年度は、ヒト肝細胞株(Hc細胞)や複数のヒト肝癌細胞株を対象に、アポトーシス刺激である過酸化水素(H2O2)刺激下に、遺伝子発現、蛋白質発現の網羅的解析を行った。複数の細胞株の中で、アポトーシス刺激に感受性を示すものと、抵抗性を示すものとが明らかになった。そこでアポトーシス抵抗性を示す細胞株(HepG2細胞)を用い、Gene Chipを用いた遺伝子発現の網羅的なトランスクリプトーム解析を行ったところ、刺激後早期の1時間、3時間で1.5倍以上の発現亢進を認めた遺伝子は各々約150個、約520個であった。それらの中にはアポトーシス関連遺伝子、細胞内情報伝達関連遺伝子、転写関連遺伝子などが含まれていた。一方、刺激前後でHepG2細胞のcell lysateを調整して2次元デイファレンシャル電気泳動にて蛋白質発現、あるいは翻訳後修飾の一つである燐酸化の変化を評価した。燐酸化蛋白質の変化は約40-180%であり、LC-MSショットガン法による質量分析から、これら蛋白質は主に細胞骨格や分子シャペロンに関与する蛋白質であることが判明した。さらにトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析との結果を統合したKey Molnetによる分子ネットワーク解析から、酸化ストレス刺激後早期から転写や細胞接着に関連する分子群が誘導されることが示された。アポトーシス抵抗性であるHepG2細胞より得られたこのような結果を、アポトーシス感受性肝癌細胞株の結果とを比較検討することで、アポトーシス抵抗性を担う責任分子(群)の絞込みを行っている。 一方、外科的に切除したヒト肝癌組織とその周辺の非癌部組織とを用い、cell lysateを調整して2次元デイファレンシャル電気泳動にて、蛋白質発現あるいは燐酸化の変化を解析している。Preliminaryな検討では、癌部組織・非癌部組織間で燐酸化蛋白質の発現パターンに相違を認めており、LC-MSショットガン法による質量分析にて蛋白質の同定を進めている。今後、肝癌細胞株で得られているデータとの対比も行い、ヒト肝癌組織におけるアポトーシス抵抗性の責任分子(群)を絞り込んでいく予定である。
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Research Products
(6 results)