2006 Fiscal Year Annual Research Report
心不全発症進展における新しい転写抑制因子NRSFとその標的遺伝子の意義の解明
Project/Area Number |
18390238
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 史朗 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80232792)
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Keywords | 遺伝子 / 循環器・高血圧 / 生体分子 / 内科 / ANP / NRSF / 心不全 / CA CNAIH |
Research Abstract |
心不全時に観察される胎児型遺伝子の再発現現象はよく知られた事実であるが、その分子機序はよく分かっていない。我々は、ANP・BNPがあらゆる胎児遺伝子の中で心不全や心肥大時における再発現現象が最も鋭敏でしかも再現性の高いことを考慮すると、ANP・BNPの転写調節機序は心不全の発症に関わる基礎的な分子基盤を共通しているとの仮説を立てて研究を遂行してきた。この過程で、ANP・BNP遺伝子の再発現に関わる興味深い転写調節系NRSE/NRSF系を同定した。すなわち、正常状態ではNRSEには強力なサプレッサーであるNRSF(Neuron restrictive silencer factor)が結合し、NRSEを含む遺伝子の発現を強力に転写抑制しているが、刺激下ではNRSFとNRSEの結合が解離しNRSFによる転写抑制が回避される結果、NRSEを含む遺伝子の転写が亢進することを証明した。 NRSFの心臓での働きを確かめるために、NRSFのdominant negative変異体を心筋細胞特異的に強制発現するマウスを作成すると、そのマウスは拡張型心筋症に似た形態を示し、心室性不整脈で突然死を来すことが明らかになった。cDNAアレイを用いてNRSFの標的遺伝子を検討すると、ANP, BNP、α骨格筋型アクチン等の胎児遺伝子の他、T型カルシウムチャンネルの一つであるCav3.2のαサブユニットをコードするCACNA1Hが候補となった。 CACNA1H遺伝子にはその転写調節領域にNRSE配列が確認された。NRSF/NRSE系の心不全における意味をさらに検討する目的で、Dahl食塩感受性ラットをモデルに検討すると、CACNA1H遺伝子が発現亢進しており、T型Caチャンネルブロッカーであるエホニジピンの投与により、Dahl食塩感受性ラットの心機能や予後が非投与群と比べ有意に改善していた。NRSF/NRSE系が心不全全体で働いている可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)