2008 Fiscal Year Annual Research Report
関節炎抑制蛋白によるリウマチ性疾患の病態解析と新規治療法開発に関する研究
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18390290
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三森 経世 Kyoto University, 医学研究科, 教授 (10157589)
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Keywords | カルパイン / カルパスタチン / フォリスタチン関連蛋白 / コラーゲン誘発関節炎 / 関節リウマチ / IL-6 / CD4陽性T細胞 |
Research Abstract |
【目的】申請者らは関節リウマチ(RA)に特異的な自己抗体の対応抗原としてカルパスタチンとフォリスタチン関連蛋白(FRP)を報告した.カルパスタチンは,炎症の活性化とRAの関節破壊にも関与するカルパイン(カルシウム依存性システインプロテアーゼの一種)の特異的内在性阻害因子であり,FRPは炎症抑制蛋白として知られる.申請者らはこれら自己抗原の炎症・骨破壊抑制効果を追究し,RAの新たな治療戦略の確立を目指している.昨年度までに,カルパスタチンは滑膜細胞でのIL-6産生を抑制すること,カルパイン活性の亢進はCD4+T細胞をTh2からTh1へ分化誘導させること,カルパスタチン遺伝子導入によりコラーゲン誘発関節炎(CIA)が制御されることを示した.FRPについては炎症への影響について相反する報告があるため,本年度はヒトおよびマウスのFRPの関節炎抑制効果を検討した.【方法】ヒトおよびマウスFRPをコードするcDNAをmRNAよりRT-PCRで増幅し,レトロウイルスベクターに組み込んだ.マウス脾臓細胞よりCD4+陽性T細胞を分離し,遺伝子組換えレトロウイルスを感染させた後にII型コラーゲン感作マウスに移入し,関節炎発現への影響を検討した.マウスFRPとFRPのレセプター候補として同定したA7(仮称)の配列からsiRNAを合成し,マウス線維芽細胞(NIH-3T3)に導入して,LPS刺激によるサイトカイン発現に対する影響を検討した.【結果】ヒトFRPを過剰発現させたCD4+T細胞を移入したマウスではCIAの発現が抑制されたが,マウスFRP導入CD4+T細胞移入マウスでは逆に関節炎は有意に増強した.マウス線維芽細胞のFRP発現をsiRNAによりノックダウンすると,IL-6産生は有意に抑制された.また,FRPのレセプター候補A7分子をノックダウンすると,IL-6産生は増強した.以上より,マウスではFRPが炎症増悪に働くが,そのレセプターの一つは炎症を負に制御する可能性が示唆された.【結論】申請者らは以前にヒトFRPがマウス関節炎に抑制的に働くことを報告したが,一方でマウスFRPがCIAを増強したとの相反する報告もある.今回の成績はヒトとマウスのFRPの生理活性が異なる可能性を示唆しており,関節炎発症におけるFRPの関与については考慮の必要がある.
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