2008 Fiscal Year Annual Research Report
生活スタイルへの不適応と随伴精神身体症状及びその背景にある多様な末梢時計同調不全
Project/Area Number |
18390317
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
三島 和夫 National Center of Neurology and Psychiatry, 精神保健研究所精神生理部, 部長 (40239223)
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Keywords | 精神生理学 / 生体リズム / 睡眠 / 多型 / 時計遺伝子 |
Research Abstract |
生物時計は、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌など行動や生理活動に見られる約24時間周期の生体リズムを制御することから、日周指向性や睡眠習慣の決定にも影響を及ぼすと考えられている。事実、いくつかの時計遺伝子多型は日周指向性や睡眠障害と関係しており、PER2遺伝子上のSNP多型が家族性睡眠相前進症候群の原因であること、PER3遺伝子のハプロタイプが睡眠相後退症候群と、また、PER3反復配列多型が日周指向性や睡眠のホメオスタシスや睡眠・覚醒のタイミングと関係することが報告されている。生体リズム同調能に関与が推定される時計遺伝子多型を同定するため、日本人925例(男性274人、女性651人、18〜73歳、平均年齢36.5歳)を対象として、自記式質問表を用いて日周指向性、睡眠、気分に関する調査を行った。日周指向性の評価にはMEQ、睡眠とその質にはPSQI、気分にはCES-Dを用いた。さらに、被験者から採取したゲノムサンプルを用いて、時計遺伝子PER2、PER3、TIM、NPAS2などの多型タイピングを行い、日周指向性、睡眠、気分指標ならびに睡眠特性との相関関係を調べた。PER2の一つの多型は気分と有意な相関性を示した。PER3ハプロタイプは日周指向性だけでなく睡眠とも非常に強く相関しており、PER3多型の一つは入眠時刻とも関係していた。また、TIMの二つの多型は気分と、NPAS2の一つは総睡眠時間とそれぞれ関係していた。時計遺伝子群の多型は、日周指向性、睡眠のタイミングだけでなく、睡眠の質や他の睡眠特性、また、気分とも相関性を示すことが明らかとなった。この結果は、時計遺伝子が生体リズムの制御を通じて睡眠や気分の調節に何らかの役割を担っていることを示唆している。
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