2007 Fiscal Year Annual Research Report
悪性神経腫瘍の治療・細胞死感受性を規定する新規遺伝子の探索
Project/Area Number |
18390389
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北中 千史 Yamagata University, 医学部, 教授 (70260320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立花 研 山形大学, 医学部, 助教 (10400540)
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Keywords | Warburg effect / mitochondria / energy metabolism / programmed cell death / glycolysis |
Research Abstract |
正常の細胞は酸素存在下ではミトコンドリア呼吸(酸化的リン酸化)によりエネルギー(ATP)産生を行い酸素利用が不可能な状況では嫌気的解糖によりエネルギー産生を行うが、嫌気的解糖ではエネルギー産生効率が著しく低下する。一方、がん細胞は一般に酸素利用可能な状況でも嫌気的解糖を行う傾向(Warburg効果)があることが知られている。しかしながらがん細胞が何故このようにエネルギー的に著しく不利な代謝を好んで行うかは長年にわたって謎とされてきた。これに対して我々はミトコンドリア呼吸が種々の細胞死刺激による、ミトコンドリアを介した細胞自殺に必要とされることを見出した。さらにそのメカニズムにつき検討を行い、ミトコンドリアを介した細胞死に必要とされるミトコンドリアタンパク質Bax,Bakの活性化にミトコンドリア呼吸が重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、解糖によるATP産生の選択的抑制を試みたところ、ミトコンドリア呼吸抑制の場合とは異なってBax,Bakの活性化や細胞死への影響は認められなかった。これらの結果は、同じエネルギー(ATP)産生メカニズムでありながらミトコンドリア呼吸がミトコンドリアを介する細胞自殺に重要な役割を果たしているのに対してサイトゾルで行われる解糖は関与していないことを示すものである。これらのことから、がん細胞が嫌気的解糖を好んで行うのは細胞死を回避しつつエネルギーを賄うための巧妙な戦略と理解できるようになった。また、ミトコンドリア依存的な細胞死は放射線や化学療法によるがん細胞殺傷に深く関わっていることから、Warburg効果はがんの治療抵抗性を与えており、Warburg効果をターゲットとした治療を行うことによりがんの治療抵抗性を克服できる可能性が考えられるようになった。
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