Research Abstract |
単球, マクロファージとともに広義に樹状細胞を含む概念である腫瘍内浸潤食細胞系(腫瘍内MPC)は, その大半が単球マクロファージに分類され, 表面抗原上樹状細胞に分類できる細胞は少ないことが分かった。また, 最近報告されている骨髄球由来抑制細胞(MDSC)との異同についての検討では,腫瘍内MPCが, 強いT細胞増殖抑制能(アポトーシス誘導能)があり, 表面抗原でもCD11b陽性Gr-1陽性という定義に当てはまるため, 広義のMDSCの定義にも当てはまる可能性があったが, 細かく細胞を検討した結果, 7割ほどは既にマクロファージへ分化しており, マクロファージとしての抗腫瘍活性もT細胞抑制機能と同時に併せ持つことが分かった。他方, マクロファージへ分化していない単球の特性を維持している段階の腫瘍内MPCには抗腫瘍免疫誘導作用があり, 皮下にその細胞を樹状細胞ワクチンとして接種してから頭蓋内に腫瘍を接種すると生存日数が延長することが分かった。つまり,腫瘍内に浸潤して間もない単球分画には単球由来樹状細胞へと分化する能力があることが示唆された。ただし, 皮下, 頭蓋内, 肝内で腫瘍内MPCを検討した結果では, 腫瘍の接種部位が異なっても腫瘍内MPCの特徴は明らかな差異が見られなかったが,腫瘍の種類が違うと,差異がみられた。従って腫瘍の発育する環境というよりは, 腫瘍から産生される因子による方が,腫瘍内MPCの分化には強く影響することが分かった。そこで, 腫瘍の微小環境を免疫治療によって変化させてみた場合, 対照群では大きく腫瘍内MPCの分化成熟に影響を及ぼしていなかったCD4陽性細胞が, 免疫治療モデルでは, 腫瘍内浸潤MPCの分化成熟に影響していることがわかった。さらに検討をすると, 免疫治療モデルでは, 腫瘍内浸潤CD4陽性T細胞の性格が,Th2よりもTh1優位になっているからであることが分かった。
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