Research Abstract |
1.目的 力学的負荷の減少により腱組織に生じるマトリクス改変現象の発生機序を解明し、力学的環境変化が腱組織にもたらす本現象を人為的に制御する手法を開発するため、外因性TGF-β1あるいはTGF-β1中和抗体の投与が除負荷による膝蓋腱の力学的特性に与える効果を検討した。 2.材料および方法 日本白色家兎の右膝蓋腱に対し除負荷手法を加えた後,S群ではPBS0.2mlのみを,T群では4ngTGF-β1を膝蓋腱周囲に投与した。さらに同処置を施した後,I群にはPBS0.2mlのみを,II群では非感作マウスIgGを,III群では,50μg抗TGF-β1抗体を膝蓋腱周囲に投与した。術後は同様に飼育し,3週で力学的検討を行なった。 3.結果 1)除負荷膝蓋腱における外因性TGF-beta1投与の効果:S群およびT群において弾性率はそれぞれ95±23MPaおよび173±56MPaであり,T群はS群より有意に高値を示した。 2)除負荷膝蓋腱における抗TGF-β1抗体投与の効果:I群,II群,III群で弾性率がそれぞれ98±27MPa,102±45MPa,52±25MPaであり,III群はIおよびII群と比べて有意に低値であった。 4.結論 本研究では外因性TGF-β1の局所投与は除負荷膝蓋腱の弾性率を有意に増加させた。一方,抗TGF-β1抗体の局所投与は除負荷膝蓋腱の弾性率を有意に低下させた。研究者らは除負荷が膝蓋腱に存在する線維芽細胞におけるTGF-β発現を亢進させることを報告した。したがって,抗TGF-β1抗体の局所投与が除負荷により膝蓋腱線維芽細胞から分泌されたTGF-βを中和し,その結果,膝蓋腱の力学的劣化を促進させたことが示唆され,除負荷における膝蓋腱線維芽細胞のTGF-β過剰産生は膝蓋腱の力学的劣化の原因ではなく,むしろ膝蓋腱の力学的劣化に対する二次的修復機転である可能性が高いと考えられた。
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