2006 Fiscal Year Annual Research Report
インテグリンの活性制御による軟骨細胞の脱分化抑制および変形性関節症の治療法の探索
Project/Area Number |
18390424
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Research Institution | Clinical Research Center for Allergy and Rheumatology, National Hospital Organization, Sagamihara National Hospital |
Principal Investigator |
福井 尚志 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 病態総合研究部, 研究部長 (10251258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 隆二 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断治療研究部, 研究部長 (70373470)
山根 昌治 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断治療研究部, 研究部長 (40419148)
増田 理亜子 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 診断治療研究部, 研究員 (10416050)
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Keywords | 軟骨細胞 / 脱分化 / インテグリン / ERK |
Research Abstract |
ヒト由来の一次培養関節軟骨細胞においてそれぞれの分子に対する特異的な抗体を用いて発現しているインテグリンの特定を行ったところ、α1,α5,αvおよびβ1,β2,β5インテグリンがヒトの関節軟骨細胞における主要なインテグリンであることが明らかになった。次いでこれらのインテグリンをRNAiの手法により網羅的に発現抑制したところ、αvβ5インテグリンの発現抑制によって単層培養開始後の軟骨基質を構築する遺伝子(COL2A1,COL9A1,COL11A2,AGC1,HAPLN1)の発現低下がいずれも軽減され、このインテグリン・ヘテロダイマーが培養された軟骨細胞の脱分化において重要な因子であることが明らかになった。 ついでこのインテグリンの下流で脱分化に関与するシグナル伝達系の特定を行ったところ、EKRシグナリングの特異的阻害剤であるU0126が脱分化の進行を抑止することを見出した。この知見に基づき種々のシグナル伝達関連分子をアデノウイルスを用いて一次培養ヒト関節軟骨細胞に強制発現させたところ、HRasの恒常活性型変異体の強制発現によって脱分化が促進され、逆に優勢不能型の発現によって脱分化が抑止されるという結果が得られた。このことからHRas-Raf1-MEK-ERKというシグナル伝達系が軟骨細胞の脱分化に関与していると推察された。興味深いことにERKシグナリングの別の特異的阻害剤PD98059は脱分化に対し明らかな影響を与えなかった。U0126はEKRの活性化を抑制するとともにすでにリン酸化されたEKRの核内移行も抑制するのに対し、PD98059はERKの新たなリン酸化のみを抑制するとされており、このような阻害作用の差が、2つの阻害剤の結果の違いを現す要因であると推察された。 またERK(シグナリングの阻害は脱分化の過程における細胞骨格の再構築には影響を与えず、このことから細胞骨格の再構築は別のシグナリングが関与していると予想された。このシグナル経路を特定するために細胞骨格の再構築に関与することが知られている主要な分子の発現をRNAiで抑制したところ、small GTPaseの一つRhoAの抑制によって単層培養された軟骨細胞の形状の変化、細胞骨格の再構築が顕著に抑制された。この知見からRhoAは脱分化の過程における細胞の形状の変化に大きく関与するものと考えられた。
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