2006 Fiscal Year Annual Research Report
血液細胞-血管内皮相互反応制御による網脈絡膜疾患の病態解明と新治療法の開発
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18390467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 和明 京都大学, 医学研究科, 講師 (90359810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 篤史 京都大学, 医学研究科, 助手 (30314222)
辻川 明孝 京都大学, 医学研究科, 助手 (40402846)
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Keywords | 網膜虚血再灌流障害 / シロスタゾール / 抗血小板剤 / 神経保護作用 / 白血球-血管内皮相互反応 / 血小板-血管内皮相互反応 / P-selectin / ICAM-1 |
Research Abstract |
我々は以前、血中の血小板数を減少させることが、網膜虚血再灌流障害の軽減をもたらすことを報告し(Nishijima K, et al.Invest Ophthalmol Vis Sci 45: 977,2004)、血小板が、白血球一血管内皮相互反応を修飾することで網膜虚血再灌流障害の病態形成に一役買っている可能性を明らかにした。血小板の機能を抑制することで、疑似血小板減少状態を作ることは可能と考え、ホスホジエステラーゼ3(PDE3)活性を特異的に阻害する抗血小板剤であるシロスタソールに注目した。シロスタソールには、白血球と血小板、血管内皮相互反応の減弱効果があるとされており(Ito H, et al. Platelets 15: 293,2004)、シロスタゾールの網膜虚血再灌流障害に対する神経保護作用について、白血球一血管内皮相互反応に着目して検討した。有色ラットを用いて、その視神経を露出、結紮し、60分間網膜中心動脈を閉塞させ網膜虚血を作製した後、視神経を解放し再灌流させることで網膜虚血再灌流障害モデルを作製した。網膜虚血再灌流障害の急性期には、白血球が血管内皮細胞上を転がるローリング現象や白血球の血管内皮への強固な接着、白血球の血管外への遊走など、ダイナミックな白血球-血管内皮相互反応が生じるが、シロスタソールの経口投与(100mgkg^<-1>day^<-1>)により、ローリング現象は最大77.6%(P<0.01)、白血球の血管内皮への接着は36.1%(P<0.01)、白血球の網膜毛細血管床への集積は20.4%(P<0.01)の抑制がみられた。また、網膜虚血再灌流障害においては、白血球ローリングを司る細胞接着分子であるP-selectin、および白血球と血管内皮との強固な接着に関与する細胞接着分予てあるICAM-1の網膜での遺伝子発現が亢進するが、シロスタゾールの投与によりともに有意に抑制された(P<0.05)。さらに、血小板と血管内皮との相互反応について検討したところ、血小板も白血球と同様に、網膜虚血再灌流障害の急性期には、ローリングや血管内皮への接着といった血管内皮との相互反応を生じるが、シロスタゾールの投与により、ローリングは32.0%(P<0.01)、血管内皮への接着は42.4%(P<0.01)の抑制がみられた。網膜虚血作製後2週間後に網膜組織障害について検討したところ、網膜虚血再灌流によって非薄化した網膜厚が、シロスタゾールの投与により有意に改善した(P<0.0001)。以上の結果によりシロスタゾールは、網膜虚血再灌流後の網膜における細胞接着分子の発現を抑制することで、白血球および血小板と血管内皮との相互反応を減弱させ、引き続いて生じる組織障害を抑制すると考えられた。
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