Research Abstract |
慢性根尖性歯周炎罹患歯の60根管に対し,感染根管治療時の拡大終了後にEr:YAGレーザーを照射し,その有用性を細菌学的および組織化学的に評価した。レーザー照射群42試料において,照射前には15試料から細菌が同定されたが,照射後はその内19試料では細菌が検出されなかった。非照射群においては,根管拡大終了時18試料中9試料から細菌が検出され,さらに1号拡大した後は9試料中6試料からは最近は検出されなかった。照射前に検出された平均細菌数は37.7CFU/根管で,照射後も細菌が検出された6試料の平均細菌数1.7CFU/根管に比べ有意に低下した。非照射の1サイズ拡大後の試料の細菌数に比べ,照射後の残存性細菌数は,有意に低かった。これらより,根管内へのレーザー照射は,残存細菌の有効なコントロール法の1つであることが示唆された。 一方,我々がPorphyromonas gingivalis381株よりクローニングし作製した,バイオフィルム関連遺伝子(gtf)をノックアウトしたRE1株のバイオフィルムに,マクロライド系薬剤であるアジスロマイシンを作用させ薬剤感受性を検索した。アジスロマイシンは,浮遊系P.gingivalisのMICに相当する10μMで,381株のバイオフィルム形成細菌を有意に減少させた。また,381株のバイオフィルムに対してはSub MIC濃度(0.0125mg)においても,バイオフィルム形成細菌の有意な減少がみられた。RE1株に対しては,10μMでバイオフィルム細菌の有意な増加がみられ,Sub MIC濃度においても増加傾向を示した。これらより,アジスロマイシンはP.gingivalisバイオフィルムに対して,抗菌活性を有するだけでなくその他の機能,すなわちクオラムセンシングにも影響を及ぼし,RE1株においてはアゴニスト様に作用することが明らかとなった。また,RE1株の異種菌体間の凝集活性を検索したところ,供試した13異種細菌中10細菌種との凝集活性は381株に比べ有意に低下した。赤血球凝集能も,381株と比較して有意に低下していた。これらより,gtf遺伝子は,P.gingivalisの単一細菌種バイオフィルム形成だけでなく,多種類の細菌種からなるデンタルプラーク形成にも関与している可能性が示唆された。
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