Research Abstract |
我々は,Toll-like receptorによる分子認識機構を応用して,βデフェンシン2を効率的に口腔内(唾液中)へ誘導できるのではないかという仮説の下で検討を行ってきた.有機酸11種類について検討した結果,最も高いβデフェンシン2の誘導能をもつクエン酸を配合したガムを試作し,61名の被験者を用いたコホート研究を行ない,口腔内微生物に与える影響についての検討を行った.口腔内微生物については,ガム摂取前後の総菌数,ミュータンス菌数,乳酸菌数,カンジダ菌数を生菌数カウントにて,また歯周病関連細菌としてPorphyromonas gingivalis (P.g.), Prevotella intermedia (P.i.), Tannerella forsythia (T.f.), Treponema denticola (T.d), and Fusobacterium spp. (Fuso.)についてReal Time PCRによって,定量解析を行った. その結果,テストガム摂取によって,総菌数,ミュータンス菌,乳酸菌,カンジダ菌の口腔内保菌には有意な影響を認めなかった(Wilcoxon t-test, p>0.05).まnた,歯周病関連細菌であるT.d.は,in vitroの研究で,βデフェンシンに対する感受性はないとされており,プラセボグループとテストガム摂取グループで有意差を認めなかった(Wilcoxont-test p>0.05).これに対して,歯周病関連細菌のP.i.,T.f.および縁下プラーク形成にかかわるとされているFuso.については,テストガム摂取により有意に口腔内保菌が減少した(Wilcoxon t-test, p<0.05). 以上の結果より,唾液中へのβデフェンシンの誘導をはかることによって,歯周病のリスクを軽減することが可能であることが示唆された.
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