Research Abstract |
申請者らはこれまで多くの研究助成を受けながら,生体材料としてのチタンに対して,加工と表面処理の一連の研究を行ってきた.放電を利用した技術は,他の歯科領域の研究機関ではほとんど研究されていない独創性の高いものである.特に,世界に先駆けてワイヤ放電加工法の有用性に着目し,基礎研究を行い,これを実用化することに成功した.一連の研究は,放電のエネルギーがチタンの成形加工だけではなく,表面改質にも応用できることを見出した現存するインプラントシステムには以下の問題点がある,(1)インプラント体は,新生骨との直接結合により機能しうるが,3-6ヶ月の骨治癒期間が必要とされる.口腔機能の維持,審美および心理社会面の観点から,インプラント体を顎骨に埋入後,直ちに機能させる(即時負荷)技術が求められているが,現状では適応症が限られている.(2)インプラントの母材であるチタン表面には天然歯に見られる免疫機構がないことから長期的な維持が難しい.また術式としては感染防御のため,術創を骨結合獲得までの期間,一度閉鎖する2回法が推奨されている.(3)インプラント埋入部位によっては骨量の不足により,インプラント補綴そのものが不可能な症例もある。これらの問題点の解決策として(1)インプラント体の形状や微小表面構造(マイクロメートルオーダ)の改良により,主に細胞応答を向上.(2)抗菌効果の得られる薬剤をチタン表面にコーティング.(3)自家骨移植や,骨充填材,おもにリン酸カルシウム系セラミックスによる,埋入部位の骨増量,などが検討されている.しかし,細胞応答の向上のみでは,骨結合促進には限界がある.抗菌効果は一般に細胞毒1生を伴う.また自家骨採取はドナー部位が制限される.骨充填材は生体内での安定性に1および成形性が悪く,インプラント表面と反応しないことから,即時負荷において重要なインプラントの初期固定が難しい.したがって本研究では,(1)マイクロオーだからさらにナノレベルの表面修飾により,生理活性物質や生体高分子の反応性を著しく向上させる.(2)抗菌性と生体適合性を融合させる.(3)インプラント体表面と反応性の高い骨充填材を開発する.本研究の更なる推進によって,ナノスケールでインプラント表面を制御できるものと考えられる.
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