Research Abstract |
本研究は,これまでに開発した「Web版看護ケアの質評価総合システム」を用いて,医療施設における看護ケアの質の評価を実施し,(1)看護の質評価指標の特定,(2)指標の標準化,(3)看護ケアの質に影響を及ぼす要因の探求,(4)質改善をめざしたベンチマーキングの明確化,を行うものである。 質評価は,6つの領域の看護ケアについて構造,過程,アウトカムの視点から評価するものであり,平成19年度は,平成18年度に引き続き「Webを用いた看護の質評価ツール」を用いて調査し,データ集計・分析・判定システムの精錬,記述データ分析の自動化(テキストマイニング試行)の検討を目的とした。 結果,29施設154病棟からの回答を得た。各回答者は看護管理者149名,看護師552名,患者5,987名であった。質に関する6つの領域毎に回答の分布および回答率,記述データをもとにした評価との比較から評価項目の洗練を行った。 患者によるアウトカム評価は,いずれの領域も高得点に偏る傾向にあったが,構造および過程評価は,いくつかの項目において回答に偏りがみられたが,概ねバランスのよい散らばりであった。 記述データ分析の自動化については,単語や文節数からの分類するファジイ分類システムからサポートベクターマシンを分類器として用いたシステムへの変更を行い,分類性能の向上を図ることができた。今後さらに,データの蓄積および研究者による記述データ分析結果との照合を重ねることでその精度向上が可能であると考えられた。また,インシデント等の発生率(患者1,000人あたり)は,転倒1.88,転落1.01,褥瘡発生0.96,院内感染0.60,誤薬2.74であった。 結果,「Web版看護ケアの質評価総合システム」を用いた大量調査の実現が可能になった。 「Web版看護ケアの質評価総合システム」は,看護ケアの質を,構造・過程・アウトカムの視点からモニタリングを可能にし,評価・改善プロセスを外部からサポートすることに貢献できる。
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