Research Abstract |
本研究は,これまでに開発した「Web版看護ケアの質評価総合システム」を用いて,医療施設における看護ケアの質の評価を実施し,(1)看護の質評価指標の特定,(2)指標の標準化,(3)看護ケアの質に影響を及ぼす要因の探求,(4)質改善をめざしたベンチマーキングの明確化,を行うものである。 質評価は,6つの領域の看護ケアについて構造,過程,アウトカムの視点から評価するものであり,平成20年度は,平成18,19年度に引き続き,「Webを用いた看護の質評価ツール」を用いて調査し,データ集計・分析・判定システムの精錬,記述データ分析の自動化について検討することを目的とした。 結果,2008年度の調査結果として,34施設154病棟からの回答を得た。各評価の回答者は,看護管理者148名,看護師584名,患者5,749名であった。質に関する6つの領域毎に回答の分布および回答率,記述データをもとにした評緬との比較から評価項目の洗練を行った。 上記を含み,研究期間3か年で,計47施設のべ420病棟における看護管理者409名,看護師1,616名,患者16,154名からの回答を得た。 患者によるアウトカム評価は,高得点に偏る傾向にあったが,構造および過程評価は,概ねバランスのよい散らばりであった。記述データ分析の自動化は,サポートベクターマシンを分類器として,分類性能の向上を図ることができた。今後さらに,データの蓄積および研究者による記述データ分析結果との照合を重ねることでその精度向上が可能である。 インシデント等発生率(患者1,000人あたり)は,転倒1.72,転落0.83,褥瘡発生1.01,院内感染0.75,誤薬2.71であった。 看護ケアの質の改善を目指したベンチマークの設定を検討するため,本評価における高得点となった病棟をの得点状況を分析した。結果,本評価結果をもとにGood Practice病棟の抽出が可能となった。抽出された病棟の機能や病棟規模は多様であり,さまざまな状況に応じたベンチマークとして設定することが可能であることが示唆された。
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