2007 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける伝統的土堰潅漑(タムノップ)の保全と再活用可能性
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18401009
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
福井 捷朗 Ritsumeikan Asia Pacific University, アジア太平洋大学部, 教授 (10027584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星川 圭介 京都大学, 地域研究総合情報センター, 助教 (20414039)
笹川 秀夫 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 講師 (10435175)
磯田 弦 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 講師 (70368009)
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Keywords | 土堤灌概 / 東南アジア / 東北タイ / 伝統技術 / 天水田 |
Research Abstract |
1.関連地方行政文書のデータベース化 収集された文書を4巻(計927ページ)にまとめ、関連項目の英語要約をエクセル表にまとめた。さらに記事を19の項目別に編成しなおした。 2.現存タムノップのカタログ作成 東北タイ18か所、北西カンボジア6か所の現存タムノップについて、計測、観察、聴き取り調査をもとに、タムノップのカタログを作成した。これらをWebサイトに示した。 3.地方行政文書と現存タムノップの照合 現存タムノップのうち、文書中に正確な該当箇所が見いだされたもの2か所、ほぼ該当すると思われるものは3-4か所があった。これらには行政側と農民側の認識とのずれが認められた。 4.タムノップ盛衰に関与する要因の析出 (1)20世紀前半におけるタムノップ建造の理由 A.水田造成そのものを推進するためにタムノップ建造 B.租税収入の増加を目的とする行政側からの建造奨励、補助金支出 C.石材、セメントの入手難から、木組みを土で覆うタムノップとともに、土堤を木材で覆う井堰の建造も推進されたが、後者は現在は全く見られない。 (2)20世紀後半以降のタムノップの衰微の理由 A.タムノップの本来的な弱点に起因するタムノップの井堰化(過剰水の処理の困難さ) B.稲作技術進歩による灌概依存度の低下(耐干性品種、犂の改良、湿田直播の普及) C.高燥地での天水田開拓(タムノップ灌概田のマージナリゼーション) D.農村経済の変化(稲作依存度の低下) E.灌概局によるタムノップ認識の不足 (3)現在におけるタムノップ残存理由 A.コンクリート井堰の脆弱性 B.経済的後進地域における高い稲作依存度 C.効果の大きいタムノップの残存 5.改良タムノップの可能性 湿潤熱帯侵食平原特有の地盤の脆弱性を考慮すれば、少なくとも河川本流を堰き止めるには、タムノップは有効である。ただし、タムノップ本来の弱点を軽減するため、流水の処理にコンクリート構造物を使用することが考えられる。
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Research Products
(1 results)