2007 Fiscal Year Annual Research Report
オセアニア環礁景観の考古学的・歴史人類学的綜合研究とその現在的活用策の検討
Project/Area Number |
18401028
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 徹 Keio University, 文学部, 准教授 (90306887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚橋 訓 お茶の水女子大学, 人間文化創成学研究科, 教授 (50217098)
吉田 俊爾 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (70081627)
茅根 創 東京大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60192548)
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Keywords | 景観史 / 考古学 / 歴史人類学 / ジオァーケオロジー / オセアニア / 環礁 / 海面上昇 / 地形発 |
Research Abstract |
人間による環境への働きかけ、その結果として生じる新しい環境が文化や社会に及ぼす影響といった相互作用の連鎖は、遠く先史時代から始まっていた。それゆえ、過去の社会や伝統文化を単純に理想化し、自然と調和的なものとして語る風潮はかならずしも正しくない。そのことを示すためにも、今まさに温暖化問題に直面するオセアニア環礁の景観史研究を進め、先史から現在に連続する「絡み合う人と自然の歴史学」を構築することが本研究の目的である。そのために、マーシャル諸島マジュロ環礁にてジオアーケオロジー調査と歴史人類学的調査を実施した。ジオアーケオロジー調査では、根茎類が栽培されるピット耕地と居住空間の配置関係を時系列にそって把握するための発掘と、完新世後期の海面低下にともなう環礁州島の地形発達プロセスを解明するための堆積物採取を実施した。2000年前に始まった人間居住と農耕活動が、陸地の拡張と地下水レンズの安定化に呼応するかたちで展開し、現在みる景観の主要要素が1000年前にはほぼ出そろっていたことが明らかとなった。また、発掘調査によって複数の墓墳が確認された。これらは農耕活動とあわせて、先史の空間構成を復元するための貴重な情報となる。歴史人類学的調査にともなう聴取や史料渉猟は、18世紀以降の植民地時代に土地に対するさまざまな働きかけがあったことを明らかにした。特に、日本信託領時代(大正期)に生じた大型台風による被害の復旧として開かれたココヤシのプランテーションが現在の景観の主要要素となっていることを確認できた。さらに、環礁州島に点在する外来樹種の分布が植民地期の土地利用にかかわる感触を現地踏査でえた。これらの成果を公開した「第21回太平洋学術会議」では、自然と人間の長期的・累積的な関係をテーマとする景観史研究が地球科学と文化人類学を連接する文理融合型の歴史学となりうることをアピールできた。
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Research Products
(15 results)