Research Abstract |
本研究は, 元代を中心としたInnermost Asiaにおける陶瓷交易の構造を明らかにし, この広大な地域におけるモノの流通の実態を追跡し, 新しく歴史像を構築することを目的としている。これらの地域から, 中国陶瓷を主として, ペルシア陶瓷などが組み合わされて発見されていることは, すでによく知られた事実である。しかし, それらは断片的な資料として存在しているのが現状である。これを是正し, 正確な考古学的情報として集成し, 内外の研究者に公表することによって, 東西交易史像を再構成することが本研究の目的である。 本研究は, 次の3本の柱からなっている。 (1) 第1は, モンゴル共和国出土陶瓷に焦点をあて, とりわけカラコルム遺跡出土陶瓷資料の調査である。くわえてサーザンホトなど周辺遺跡出土品を調査し, 比較研討する。 (2) 第2は, 内モンゴル自治区・中国東北部・ロシア沿海州地域出土の貿易陶瓷について, 生産窯が不明のところが多く, この課題を含めて, 統一性をもった考古資料として再調査し, 資料の集成をはかり, 公表する。 (3) 第3は, 広大な交易範囲を示しているモンゴル帝国内において, その中核とみられるインナーモスト・アジアを, 貿易陶瓷の流通をキーワードにして, 日本・北東アジア・東南アジア・西アジアなど他地域と, 比較研討し, ユーラシアにおけるインナーモスト・アジアの位置付けを明らかにする。
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