2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際人道秩序の危機の時代における難民定住基準の国際比較に関する学際的研究
Project/Area Number |
18401040
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小泉 康一 大東文化大学, 国際関係学部, 助教授 (50266227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 弘次 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (00185795)
児玉 克哉 三重大学, 人文学部, 教授 (50225455)
墓田 桂 成蹊大学, 文学部, 専任講師 (20407604)
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Keywords | 国際人道制度 / 難民認定基準 / 難民への公的補助 / 国際定住基準 / 国際研究者交流 / イギリス:スイス:アメリカ |
Research Abstract |
様々な難民定住モデル 現今の世界の失業率と経済不況からみると、先進国と発展途上国を問わず、難民を受け入れる社会は益々、彼らの受け入れを経済負担としている。入国制限措置を実施する主要な目的の一つは、多数の外国人の存在で作り出される社会的緊張や文化的軋轢を最小化することである。難民政策は一般に、国家の自己利益と特定集団の利益に、国内、地域内、国際政治の状況を考慮して作られている。国家は人道的な理由以上のものをもった時、この負担を喜んで受け入れてきた。寛大な庇護政策ないし定住政策の策定には、政治的考慮の重要性が欠かせない。 その点を押さえた上で、例えば欧州各国はこれまで、難民受け入れで異なったモデルを作ってきている。フランスとドイツは、定住支援で短期的な措置に集中している。一方オランダと特に、1970年代のスカンジナビア諸国は、難民の社会への統合で長期的な仕組みを開発してきた。スカンジナビアでは一般に、公共部門が定住サービスの主体となっている。スウェーデンでは1970年代、難民への定住支援は、物質的な支援と早急な労働市場への参入に重点がおかれた。難民の心理的ニーズなどは話題にのぼらなかったが、今日かなりの程度でトラウマや心理的ケアに関心がはらわれている。しかしこの新しいやり方は、無意識にトラウマ被害者を病人にして、彼らの無力さを助長しているとの批判がある。難民にとって意味ある生活の再建という仕組みがない中で、彼らが就ける仕事はない。イギリスは定住策で、かなりの程度、その場限りの計画を採用している。同国では、受け入れ計画でNGOが中心的な役割を果たしている。西欧の大半の国々は、インドシナ難民やコソボ難民のような緊急事態での短期計画を除けば、国際的な定住計画には参加してこなかった。 ここでは触れることができなかったが、南北アメリカ、アフリカ、アジア、豪州を含め、世界全体として眺めれば、過去30年間、入国した難民は受け入れ国の社会に、経済的、社会的に分散されるのでもなく、十分に統合されるのでもない状況が続いている。
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