2006 Fiscal Year Annual Research Report
明治期における西洋近代とアイヌ民族との出会いに関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
18401046
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
出利葉 浩司 北海道開拓記念館, 学芸部, 研究員 (40142088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮武 公夫 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50291993)
財部 香枝 中部大学, 国際関係学部, 准教授 (00421256)
矢口 祐人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00271700)
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Keywords | アイヌ民族 / セントルイス万国博覧会 / ハイラム・ヒラー / ベンジャミン・ライマン / チャールズ・カーペンター / ジェシー・ターボック・ビールス / フィールド博物館 / アメリカ自然史博物館 |
Research Abstract |
この研究は、明治期を中心とした時期の北海道において、先住民族であるアイヌの人びとが欧米の研究者と出会う、その現場を文化人類学的にとらえ、そこで起こったできごとを、西洋が発明した文化装置である博物館をキーワードに考察し、「アイヌ文化」が20世紀前半の西洋社会に領有されていく過程を検証することを目的としている。 本年度は、おもに(1)1904年にアメリカ合衆国セントルイス市で開催された万国博覧会関連資料の調査と、(2)開拓使地質測量鉱山技師長であったB.ライマン(1873年来日)の残した日記・書簡・アイヌ関係未発表論文類の調査をおこなった。 (1)セントルイス万国博覧会には9名のアイヌの人びとが招聘され「人類学展示」されていることが知られている。このときに撮影された写真類を、セントルイス市図書館、ミズーリ州立歴史協会、ミズーリ州立博物館(以上セントルイス市、ジェシー・ターボック・ビールス撮影)、アメリカ自然史博物館(ニューヨーク市、ジエシー・ターボック・ビールス撮影)、フィールド博物館(シカゴ市、チャールズ・カーペンター撮影)において調査、複写し、あわせて論文等への使用許可申請をおこなった(出利葉、宮武、矢口)。このうちビールス撮影の写真ネガはガラス乾板であったが、それらが博覧会事務局からアメリカ自然史博物館に移っていることを確認し、さらにそのなかには被写体の背景に修正が加えられ、電柱など近代的なものが「消去」されているものがあることをネガ段階で確認した(宮武)。 また、ミズーリー州立歴史博物館にはセントルイス万博に関連する展示室があり、そこにアイヌ資料1点(土産物のさじ)が展示されていることを確認した。セントルイス万博時点での収集ではないということであるが、由来は不明とのこと。同博物館が他にもアイヌ資料を所蔵している可能性もあり、今後も調査を続けていくことにした(出利葉、矢口)。 (2)ライマン関係資(史)料は、フィラデルフィア・フィロソフィカル・ソサエティにおいて財部が調査をおこない、これまで日本側の研究者が確認していない資料もふくめて、複写をおこなった。 このほか、1901年に北海道を訪れたハイラム・ヒラーが残した手書きの日記類については、すでに出利葉がデジタル撮影しているが、この翻刻作業を矢口が開始した(平成19年度も継続予定)。 また、成果の普及として、当研究の成果の一部を、(財)アイヌ文化振興・研究推進機構が平成20年に予定しているアイヌ工芸品展において公表することとした。とくにアイヌ民族との共同作業としては、開拓記念館で開催された第145回テーマ展示会『北の手仕事』およびその図録において、本研究の成果を共同利用した。
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Research Products
(3 results)