Research Abstract |
本研究は,以下の事項を目的として行った.1)アジア開発途上国における水と衛生に関する実態を明らかにすること,2)不適切な水に伴う健康リスク評価を行うこと,3)水の経済的評価を行うこと.この目的のため,いくつかのアジア開発途上国において現地調査を行った.そして,以下に示す重要な知見を得た. 1)過去20年間の国際的な取り組みにより,水については約20億人,衛生については約15億人がそれぞれ新たにアクセス出来るようになった,2)しかしながら,この間の人口増加はその成果の大部分を相殺した,3)その結果,途途上国人口の11億人が水へのアクセスがなく,24億人が衛生へのアクセスできない状況にある.またネパール国を事例としたリスク評価から,4)貧困層ほど水系感染症へのリスクが高い,5)許容感染リスクを1/10,000とした場合,サルモネラ症は2〜3log、コレラは1〜2log、赤痢は3〜4logの除去率が必要である,6)log除去率を1だけ高めると,感染リスクを1/10程度低減できる,7)感染リスク低減のための水処理法として,布ろ過,浄水器,煮沸,塩素消毒等はいずれも途上国の実情には適さないことを示した.さらに水の経済分析より,8)水道利用世帯と非利用世帯には経済的負担と病気の負担に著しい格差があること,9)途上国の低所得者層であっても支払い意志があり、受益者負担の原則に従ってコスト負担を求めることは可能であること,10)需要抑制的な視点に立った料金設定が必要であることを明らかにした.
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