Research Abstract |
水系感染症の実態を知るために,研究対象領域内の村落数箇所において,洪水期と乾季における感染者の実態調査をインタビューによって本年度も継続的に行った.調査項目は従来の病名を収集するものではなく,高熱,頭痛,腹痛等の症状に関するものとし,国立感染症研究所がラオスで行った感染症質問表を参考にし,カンボジア保健省の協力を得て行った.これを対象領域内数箇所のインタビューを行った村落周辺の河川水,氾濫水,ため池,沼地において,雨季と乾季について行った.広域大腸菌群の調査はパック試験(検査紙試験)によって観測した.以上の観測では,地形,村落の職業形態,水源,インフラ(電気や道路)等の数値地図情報の取得,作成を行った.昨年度作成した水文モデルと病原性細菌の移流拡散モデルによって大腸菌群の移流拡散モデルを構築し,カンボジアに適用した.その結果,おおよそ良好な成果を上げた.大腸菌群移流計算を組み込んだ水理氾濫モデルと用量反応モデルを用いて,洪水氾濫が持つ水系感染症リスクの評価手法の構築およびその評価を行った.その結果,洪水氾濫は大腸菌群を拡散させる働きを持つと同時に,氾濫終息期における水位低下が原因で水源を高濃度の大腸菌群に汚染させることが明らかになった.それらの知見を用いたリスク評価によって,洪水氾濫時のリスク増加要因が,乾季および洪水が小規模であったときの水位の低下,水域が高い閉鎖性を持つ,水域周辺に居住地が存在することがわかった.特に居住域において洪水氾濫は感染症リスクを60〜90%まで上げるという結果を得た.その対策として井戸を使用するための大腸菌に関する基準値を設けることや,水深による使用制限を設けることを提案し,その評価を行った
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