Research Abstract |
真野らは,2006年度に実施した現地調査(2006年12月21日〜2007年2月1日)の資料を分析した.土砂および地下水に含まれる,ヒ素,鉄,マンガンなどの陽イオン,塩素,リン酸,炭酸などの陰イオンの含有率を調べ,浅い帯水層でヒ素,鉄,炭酸の濃度が高いこと明らかにした.また,土砂および地下水中のヒ素濃度の比をとって,分配係数を求めた.さらに,ヒ素の溶出実験を行い,同じく分配係数を求めた.ヒ素の分配係数は,溶液中の鉄イオン濃度と相関があり,鉄濃度が高くなるほど,分配係数が低くなり,共沈現象による相互作用があることが分かった. 2007年度も新たに,現地観測を行い,土砂試料と地下水試料の採取を行なった.この試料を用いて,溶出実験と吸着実験を行い,地下におけるヒ素輸送モデルの構築を進めている. 石橋らは,溶出作用因子である有機性物質および化学物質の化学的挙動を調べた.土壌からのヒ素溶出に係わると考えられる物質の化学的解釈に関する実験では,ヒ素を含有するモデル土壌に種々の物質を添加し,酸化還元電位やpH値を指標にしたカラム装置実験を行った. その結果,嫌気性条件下で,有機リンの一種トリフェニルホスフィンの濃度が高い場合にヒ素溶出量が著しく増加する傾向を見出した.その値はコントロールの630倍に及んだ.また,弱アルカリ性側でヒ素が溶出しやすい性質を受けて,アンモニアやリン酸二水素カリウムはコントロールの20倍弱の溶出がみられた.メタノールといったアルコール類でも同程度の溶出がみられた.結論的には有機,無機に係わらず,リン酸は溶出に重要であり,リン酸は鉄とヒ素の結合を解き,ヒ素の溶出を助長すると結論づけた.
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