Research Abstract |
ガンジスデルタに位置するバングラデシュで, 飲料水の大部分を地下水に頼り, その地下水が高濃度の砒素で汚染されており, 1.2億人の人口の30%が安全基準を超える砒素濃度の地下水を利用している現状を改善し, 安全で十分な量の水資源を見出すことに本研究の目的がある. 1年目, 2年目に実施した, 南西バングラデシュにおける現地調査の資料を分析し, 深層帯水層では土壌中および地下水中の砒素濃度が低く, 有望な水資源であることが分かった. 砒素濃度の鉛直分布は, 堆積した土砂の粒径と表面に共沈し砒素との錯体を作っている, 鉄やアルミニウムの濃度と関係が深く, この国土における現在まで約1万年の堆積環境が鉛直分布を形成していることが分かった. さらに, 各資料の溶出・吸着実験を行い, 線形の溶出モデルで減少が説明できることを明らかにした. その中に現れる, 反応速度係数, 分配係数を同定し, これら係数に影響する因子の分析を行つた. 分配係数は, 前述の鉄濃度, アルミニウム濃度のほかに, 有機物量が影響することがわかった. 後者に関しては, pHで代表させ, これら3つのパラメータによって, 分配係数を予測する高精度モデルを作成した. 表層から深層までの各帯水槽の砒素濃度, 反応速度係数, 分配係数が同定でき, 深層帯水層かた地下水を大量取水した場合の, 砒素の鉛直方向の輸送を予測する数値解析を実施した. この結果, 大部分の砒素は途中の土層に吸着し, 安全に取水できることが分かった.
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