2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18404018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土居 義岳 九州大学, 大学院・芸術工学研究院, 教授 (00227696)
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Keywords | ガブリエル / 古典主義 / ボルドー / エリセ / 地方長官 / 市参事会 / 高等法院 |
Research Abstract |
12月2日から1月6日までボルドー市とパリ市で調査旅行を行い、ジロンド県公文書館、ボルドー市公文書館、ボルドー市図書館、国立公文書館、国立図書館で資料収集をした。ボルドー市広場建設にさいして建築家ガブリエル、地方長官、市長、市参事会、高等法院が作成した公文書や関連した地図や建築図面など撮影複写し、またそれにかかわる文献多数を入手し、分析した。 その結果、次のような新しい知見を得た。まず最終計画(ガブリエル案)に先行する建築家エリセ案が存在していたこと。それをめぐって地方長官が、地元の市参事会や高等法院と、土地の所有権にかんする認識、徴税局に建物を提供していた地元有力者の既得権益、川を埋め立てることによる水流の変化への懸念、それが港湾施設に被害を与えることの危惧、といった諸点について対立していた事実を発見した。 この中央の宮廷権力と地方権力の対立という図式のなかで、地方権力は一元的ではなかったこと。まず市参事会が妥協し、すこし時間をおいて高等法院が妥協したことがわかった。 さらに実現されたガブリエル案は、地方権力からの反対を克服して実現されたといいうより、エリセ案という前身計画すでに顕在化されていた対立における反対意見を、よくスタディし、反対理由の無根拠性を理論的に解き、しかし埋め立てを最小限にするなど実質的には反対意見をとりいれるという妥協もした、巧妙なものであったことも明らかにした。 さらに公文書の中には明言されていないものの、広場建設の背景として、中央権力の出先機関的な徴税局、商業促進のために中央指導で組織された商業会議所といった新しい施設建設があって、こうした新制度の理念が広場建設の動機にもそれへの反対理由にもなった可能性があるという仮説が得られた。 (夏期と冬期2回の研究旅行の予定であったが、夏期の入院とリハビリのため冬期1回に集中した。そのため作業が若干遅れ、雑誌論文の執筆は次年度としたが、学会発表の梗概は1件作成した。)
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