2007 Fiscal Year Annual Research Report
海水湖は種形成の揺籃となるか?パラオ諸島における海洋生物の進化プロセス
Project/Area Number |
18405015
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
玉手 英利 Yamagata University, 理学部, 教授 (90163675)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 慶明 山形大学, 理学部, 教授 (60111358)
半澤 直人 山形大学, 理学部, 教授 (40292411)
RICHARD W.J. 山形大学, 理学部, 准教授 (90260455)
岩田 尚能 山形大学, 理学部, 講師 (70302289)
鈴木 英勝 石巻専修大学, 理工学部, 助教 (80306068)
|
Keywords | 生物多様性 / 異所的種分化 / パラオ共和国 / 海水湖 / 浮遊性カイアシ類 / 多様度指数 / 群集構造 / 多変量解析 |
Research Abstract |
熱帯域の海水湖が、海洋生物の異所的分化を促進する「種形成の揺藍」となる可能性を検証するために、パラオ共和国において、平成19年10月21日から27日まで海洋生物の生物多様性に関する第2次現地調査を行った。初年度に引き続き、海水湖および沿岸域での動物プランクトン等の種組成、種多様性を調査した。また、カラヌス目カイアシ類を対象にして、海水湖集団の集団遺伝学的解析を行った。前年度までの調査地点を加えこれまでに海水湖20地点、沿岸域19地点において、プランクトンネット、採水器、採泥器を用いて生物試料を採集し、同時に水質分析計を用いて採集地点の水質調査を行った。生物試料は現地でアルコール固定をした後に、研究室に持ち帰った。浮遊性カイアシ類について形態学的手法による種の同定おこない、属・種レベルで34の分類群を確認した。多変量解析により浮遊性カイアシ類の群集構造パターンを比較したところ、生息域に応じて3つのグループに分けられた:(1)部分循環型海水湖、(2)浅く平坦な湖盆を持つ全層循環型海水湖(タイプA)、(3)深い湖盆をもつ全層循環型海水湖(タイプB)と全ての沿岸域。部分循環型湖では、種多様性が著しく低く、汽水性の2種のみ(Bestiolina similisとOithona dissimilis)が優占していた。タイプAの全層循環湖の種多様性は比較的低いレベルであった。タイプBの全層循環湖の動物プランクトン種組成は沿岸域群集の影響を受けていることが示された。以上から、浮遊佐カイアシ類の種多様性は各海水湖の隔離の程度と局所的な環境条件(底質の状態、湖盆など)によって大きく変化することが示唆された。今年度より新たに実施した集団遺伝学的解析の結果、タイプBの全層循環湖では湖外との遣伝的隔離がほとんどないこと、部分循環湖では高度な遺伝的分化が生じていることが示された。以上の研究成果の一部は、2007年度日本ベントス・日本プランクトン学会合同大会(2007年9月)の一般講演などで発表した。
|
Research Products
(2 results)