2006 Fiscal Year Annual Research Report
ダージリン高級紅茶の香気生成の秘密の解明と新しい紅茶製造への利用に向けた調査研究
Project/Area Number |
18405027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 完三 京都大学, 化学研究所, 教授 (20087563)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 正治 京都大学, 化学研究所, 助手 (60303898)
清水 文一 京都大学, 化学研究所, 助手 (50324695)
木下 朋美 鹿児島県立短期大学, 生活科学科, 助手 (20399257)
|
Keywords | ダージリン紅茶 / セカンドフラッシュ / 香気生成機構 / ヨコバイ / アザミウマ / Camellia sinensis / hotrienol / 2,6-dimethylocta-3,7-diene-2,6-diol |
Research Abstract |
本調査研究には、Tocklai Tea Experimental Station(TTES)の母体であるインドTea Research Association(TRA)の全面的協力が得られることとなり、2年間の共同研究契約を締結し、調査研究を下記のように実施した。 1)ダージリン高級紅茶"Second flash"の実態調査 5月末から約2週間の日程で、日本側から3名の研究者がインド/アッサム地方にあるTTESとダージリン地方の茶園への調査研究を行った。インド側からチャの分子生物学者および昆虫生態学者の2人の研究者とともにダージリンの茶園を順次肋間し、各茶園での虫害の状況と製茶状況を視察した。台湾の東方美人茶ではヨコバイが主な虫害であるのに対し、ダージリンではョコバイの他にアザミウマの食害が多かった。いずれの虫害がダージリン茶の香気形成に重要かを明らかにする必要がある。この点を解明するための実験計画をインド側研究者に指導した。また、訪問した二つの茶園では実際に"Second flash"製造時の各製造段階でのサンプルの採取を行った。 2)虫害チャ葉から作られる"Second flash"特有香気生成機構の解明 2-a)昆虫の吸汁刺激によるチャ葉中での香気成分の変動:上記サンプリング試料をGC-MS香気分析に供した。台湾東方美人茶での研究結果と比較して検討した結果、ダージリン紅茶"Second flash"の特有香気成分として知られているhotrienolなどのモノテルペンアルコールの生成に、虫害が密接に関与していることを確認した。また、虫害が極めて軽度と判定されていた試料からも、この特有香気の生成が認められ、虫害痕跡が現れる以前にこれらの香気成分の生合成が起こっていることが推測された。この点を明らかにするための実験計画をインド側研究者と打ち合わせた。2-b)虫害刺激によるチャ葉中でのdiol生合成の確認:日本のやぶきた種茶園で、ヨコバイの被害を受けないように農薬処理を行ったチャ葉と虫害を受けたチャ葉とで香気成分を比較し、diolの生成はヨコバイの吸汁刺激が引き金になっていることを確認した。 3)新しい簡易紅茶製造法開発に向けた調査研究 高品質な紅茶を簡便に製造するための新しい技術として、烏龍茶の製造技術を応用することをTTESの研究者に説き、そのための基礎的データを集める予備実験の指導を行った。
|