2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国の自然マングローブ保護区における主要樹種の遺伝的多様性と繁殖実態の調査
Project/Area Number |
18405028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
練 春蘭 The University of Tokyo, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (40376695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝月 岱造 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10107170)
後藤 晋 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (60323474)
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Keywords | マングローブ / 生物保全 / 花粉散布 / 遺伝子流動 / マイクロサテライト / 葉緑体DNA / 交配 / 遺伝構造 |
Research Abstract |
核と葉緑体SSRマーカーを用い、中国のマングローブ生息域のほぼ全域において、マングローブ7種の集団遺伝構造を調べた。解析集団数はAcanthus cifohus 6、ツノヤブコウジ14、ヒルギダマシ10、オヒルギ9、メヒルギ10、ヒルギモドキ6、ヤエヤマヒルギ15である。cpSSRで識別可能な葉緑体ハプロタイプは種毎に3-11タイプあり、メヒルギ(10)とヒルギダマシ(11)以外は5ハプロタイプ以下しか認められなかった。また、いずれの種でも限られたハプロタイプが各集団で優占していたことから、各集団は限られた祖先によって成立した可能性が考えられる。核SSRマーカーでの解析の結果、7種のマングローブはいずれも集団内の遺伝的多様性が低いことがわかった。集団内の近交係数はすべての種で有意に高かったことから、近親交配が集団内の多様性低下を加速している可能性が考えられる。いずれの種でも集団間の遺伝的分化は有意であり、花粉や種子の散布を通しての集団間の遺伝的交流が極めて少ないことが示唆された。これまで、マングローブにおける集団遺伝研究は一種のみを扱ったものばかりであったが、本研究は同所的に生育するマングローブ複数種を同時に解析し、共通する遺伝構造を初めて明らかにした。 マングローブの集団内の繁殖特性を詳細に明らかにするため、代表的なメヒルギ集団を対象にして、空間遺伝構造、交配様式、花粉・胎生種子の散布様式を調べた。0.55haの調査区を設定し、その中に分布する全ての成木(2062本)と調査区内に設定された4つの実生プロット内の実生(177本)から葉サンプルを採取した。また、花粉散布パターンを調べるため、調査区内の11母樹から378個の胎生種子サンプルも採取した。各サンプルについて、核SSRとcpSSRマーカーを用いて遣伝子型を決定し、空間遺伝構造と花粉・胎生種子の散布パターンを明らかにした。その結果、調査区内の成木集団では12葉緑体ハプロタイプが同定されたものの、上位5タイプによって成木個体の98.7%が占められていた。成木の分布には、cpSSRと核SSRマーカーのいずれの解析においても空間遺伝構造が存在することがわかった。花粉と胎生種子の散布距離が非常に短かかったことが(花粉平均15.2m、胎生種子平均9.4m)、集団内の空間遺伝構造の要因と考えられる。以上の結果から、この集団は限られた祖先が長距離散布によって定着し、その後集団内で成長した母樹が近距離の種子散布を繰り返すことで成立したものと推測される。
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Research Products
(3 results)