Research Abstract |
本年度は,昨年度,一昨年度に引き続き,南米地域での植林ユーカリグランディスの表面成長応力に及ぼす肥大成長速度の影響をフィールド測定した.また,木部試験片を実験室に送付し,材質パラメータ(ミクロフィブリル計画,気乾密度,繊維長)の測定を行った.今年度の調査地は,ブラジル・マラニオン州アサイランジア市近郊(南緯5度,18年生)である.昨年度までの成果をも考慮すれば,表面成長応力(解放ひずみ)の絶対値は今回が最も小さく,明らかな緯度依存性が認められた.また,伐倒による丸太横断面の心割れも明らかに少なかった.さらに,赤道に近い植林地ほど平均肥大成長速度は大きく,ミクロフィブリル傾角も高くなり,気乾密度は増加した.繊維長については緯度依存性は認められなかった.なおそれぞれの植林サイトごとに,成長応力やその他の材質パラメータの個体直径(同一林齢を対象としているので,肥大成長速度に等価)依存性を検討したところ,相関はなかった.続いて,繊維長の放射方向分布パターンから,成熟材形成が個体直径によって決まるのか,あるいは形成層齢によるのかを検討した.赤道に近い植林地では直径に依存し,中緯度,高緯度域では形成層齢に依存するという結果が得られた.このことは,別途行っているオーストラリア産の植林ユーカリによっても支持された. 以上の結果が緯度・気候区分の違いによるものなのかは,今後,同一緯度域(赤道付近,中緯度熱帯,亜熱帯,温帯のそれぞれ)で複数個所を対象に調査して行かなければならない.
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