2008 Fiscal Year Annual Research Report
強乱流混合海域における力学機構と高生物生産維持機構の解明
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18405030
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 伸吾 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90202043)
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Keywords | 潮汐混合 / 乱流 / 生物生産 / 沿岸環境 / 食物連鎖 / ムール貝 / 数値シミュレーション / 安定同位体 |
Research Abstract |
2008年7月に、超音波流速計を装備したウェールズ大学バンガー校海洋科学部が所有する海洋観測船を使用して、航走流動観測、CTD観測、採水、採泥を実施した。観測に際しては、日本側からは3名、英国側からは5名の研究者が交代で乗船し、2007年度の解析結果に基づき底生珪藻に着目して観測を行った。 その結果、POC、PON、Ch1.aの平均値は、海峡中央部の養殖場付近で最も高い値が観測され、海峡南部で最も低い値が認められた。また、季節によってメナイ海峡の一次生産のメカニズムそのものが異なる可能性があることが分かった。POMの安定同位体比は春季と夏季で変化しており、これは植物プランクトンの成長速度と、動物プランクトンから排出されるアンモニアの利用が増えるためと推察された。また、ムール貝養殖場で採取した底生珪藻の同位体比は、他の地点から採取されたものよりも低い炭素同位体比と窒素同位体比を示しており、これらはムール貝から排出されるアンモニアを利用することで高い成長率を有していることが推測された。ムール貝の餌を安定同位体比分析に基づく栄養段階毎の同位体濃縮率から推測すると、底生珪藻とPOMの中間に位置した。このことから、メナイ海峡のムール貝は、底生珪藻とPOMを主要な餌資源として利用していることが分かった。しかし、難分解性のデトライタスがPOMの大半を占めており、ムール貝がデトライタスを餌として積極的に利用していないことが考えられるため、ムール貝および底生珪藻と浮遊性植物プランクトンの同位体比から海峡内のPOM構成を推定すると、底生珪藻のPOMに対する寄与は海峡中央部で増加していることが分かった。 結論として、従来、浮遊性植物プランクトンがムール貝の主要な餌として重要であると考えられてきたが、むしろ底生珪藻の役割が大きいことが示唆されるに至った。
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