2006 Fiscal Year Annual Research Report
セミパラチンスク旧ソ連核実験場周辺住民の骨髄異形成症候群(MDS)と白血病
Project/Area Number |
18406001
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木村 昭郎 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70127645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兵頭 英出夫 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (30253074)
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / MDS / 原爆被爆者 / セミパラチンスク / AML1 / 白血病 / 放射線 |
Research Abstract |
セミパラチンスクの被曝様式は、低線量でかつ慢性の外部及び内部被曝であり、広島の被爆様式とはまったく異なっていることから、MDS、白血病など血液腫瘍の発生様式も異なっている可能性がある。我々は、原爆被爆者ではMDS発症のリスクが高いことを明らかにしている。さらに遺伝子レベルでは、造血幹細胞の分化増殖に重要な役割を果たしている転写因子AML1遺伝子の点突然変異を、ハイリスクMDSに高率に見出した。かつ変異は、放射線誘発及び化学療法による二次性MDSでは本遺伝子内のN末領域に集中していた。またAML1変異を有する症例では、受容体チロシンキナーゼ(RTK)-RASシグナル伝達経路の遺伝子変異を高頻度に同定した。そこで、MDSと白血病の遺伝子レベルにおける原爆被爆者との比較を行い、被爆様式の違いによる異同を明らかにしようと試みた。 最近10年間に収集したMDS・白血病の中で、遺伝子解析が可能であった50症例の内訳は、急性骨髄性白血病(AML)27例(FAB分類でM18,M29,M43,M53,M64),MDS 16例(RA2,RAEB4,MDS-AML10)、急性リンパ性白血病(ALL)5例、慢性骨髄性白血病(CML)2例である。AML1点突然変異は、骨髄あるいは末血よりDNAを抽出し、PCR-SSCP (single strand conformation polymorphism)及び塩基配列解析により同定した。 この結果MDS, RA, AML, ALL, CMLには変異を認めなかったのに対し、MDSの中で特にMDS/AML(RAEB, RAEB-T, MDS-AMLをまとめて呼ぶ)14例中4例に変異を認めた。変異を認めたのは37才男性(変異部位はpre176Arg),36才男性(Gly138fsX187)、68才女性(Arg177Gln)、60才女性(Arg177Gln)の4例であり、変異部位はすべてN末側に見出された。また3例目はN-RAS変異も認めた。なお1例目、2例目は大気圏核実験が実施された1949〜1963年に被曝を受けたと考えられる。これらの例では、造血幹細胞にAML1変異による血球分化の異常と、RTK-RAS経路の変異による増殖シグナルの亢進が付与されることにより、MDS/AMLが発症したものと考えられる。4例と少数例ではあるが、AML1 N末側に変異を見出したことから、セミパラチンスクの被曝においても原爆被爆と同様な遺伝子変異を誘発し、MDS/AMLの発症をもたらすことが推測された。
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Research Products
(7 results)