Research Abstract |
1)種分化の対象としている大陸型種グループのうち,タイで採集された標本をもとに,Simulium亜属のtuberosum種グループの4構成種,striatum種グループの4構成種,およびvariegatum種グループのうち1構成種について,DNA抽出を行い,標的遺伝子ミトコンドリアrRNAの塩基配列を決定した.残りの構成種の材料が採集されデータがそろった段階で各種グループの構成種間の系統解析を行う予定である. 2)島嶼型種グループの種分化解析のため,フィリピンのミンドロ,パラワン,ネグロスの3島においてブユの幼虫,蛹の採集を行った.その結果,Gomphostilbia亜属のbaisasae, batoense, banauenseの3種グループおよびSimulium亜属のmelanopus種グループ,およびWallacellum亜属の構成種を得,現在DNA抽出を行い,標的遺伝子ミトコンドリアrRNAの塩基配列を決定中である.この調査のなかで,ミンドロで新種2種を得た.このうち1種はGomphostilbia亜属のceylonicum種グループとしてフィリピンから初めて記録された.パラワンでは,Gomphostilbia亜属の新種2種を得たほかWallacellum亜属をはじめてこの島から記録した.さらにネグロスではSimulium亜属のmelanopus種グループに属する新種1種を得た.このほかに申請者が先にルソン島で採集したブユ標本を分類学的に検討し,Gomphostilbia亜属banauense種グループの1新種,Simulium亜属melanopus種グループの7新種,argentipes種グループ1新種およびWallacellum亜属3新種を見いだした.また,タイ国北部で共同研究者が採集した標本を検討し,Gomphostilbia亜属のceylonicum種グループの1新種を見いだした.これらはすべて記載を行い,すでに論文として発表した. 3)タイ国北部のBan Pang Faenで共同研究者が毎月2回人囮法で1年間採集したブユ雌成虫16,552個体の同定を行った.その結果,6種が得られた.このうちS.nodosumとS.asakoaeの2種が優先種であった.この2種の季節消長は前者が乾季に後者が雨期に多く,異なるパターンを示した.現在S.nodosumについては個別の解剖を進めている.解剖が済んだ個体の一部からすでにフィラリアの感染をみいだしている.今後優先種2種のブユにおけるフィラリア感染の季節的動熊を解明したい.
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