2006 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトにおける寄生虫による膀胱癌の発症の分子疫学的研究
Project/Area Number |
18406021
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
川西 正祐 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10025637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 真理子 三重大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10171141)
及川 伸二 三重大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (10277006)
平工 雄介 三重大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30324510)
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Keywords | ビルハルツ住血吸虫 / 膀胱癌 / 8-ニトログアニン / DNA損傷 / 活性窒素種 / 誘導性NO合成酵素 / 炎症 / 感染 |
Research Abstract |
寄生虫感染症は特に発展途上国において重要な健康上の問題である。ビルハルツ住血吸虫はアフリカから中東にかけて分布する寄生虫であり、膀胱癌をもたらす。この寄生虫による発がんにおいては、慢性炎症が重要な役割を果たすと考えられる。炎症条件下では炎症細胞や上皮細胞から活性酸素・窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々は、これまで種々の臨床検体および動物モデルで8-ニトログアニンが発がんに関連して生成されることを世界に先駆けて明らかにしている(Biol Chem 2006, Antioxed Redox Signal 2006)。本年度は、ビルハルツ住血吸虫の主な流行地の一つであるエジプトの膀胱癌患者より生検および手術標本を得て、免疫組織染色を行った。その結果、がん細胞と炎症細胞において明瞭な8-ニトログアニンの生成を認めた。誘導性NO合成酵素(iNOS)およびその転写因子であるNF-κBとHIF-1αの発現も同様に認められた。以上の結果から、炎症反応によるNF-κBおよび組織低酸素によるHIF-1αの両者の活性化により誘導されたiNOSを介して8-ニトログアニンが生成され、発がんに関与すると考えられる。さらに、我々は感染・炎症関連発がんに関して以下の成果を得た。胆管癌を起こすタイ肝吸虫に感染した動物の肝内胆管上皮における8-ニトログアニン生成は、抗寄生虫薬により抑制された(Int J Cancer 2006)。ヒトパピローマウイルス感染による子宮頸部異形成患者の生検標本で8-ニトログアニン生成を認めた(Cancer Sci in press)。以上の結果から、8-ニトログアニンはビルハルツ住血吸虫感染による膀胱癌をはじめとする感染・炎症関連発がんのリスクおよび予後を評価する有用なバイオマーカーとなる可能性がある。
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