2007 Fiscal Year Annual Research Report
エジプトにおける寄生虫による膀胱癌の発症の分子疫学的研究
Project/Area Number |
18406021
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
川西 正祐 Suzuka University of Medical Science, 保健衛生学部, 教授 (10025637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 真理子 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10171141)
及川 伸二 三重大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10277006)
平工 雄介 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30324510)
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Keywords | ビルハルツ住血吸虫 / 膀胱癌 / 8-ニトログアニン / DNA損傷 / 活性窒素種 / 誘導性NO合成酵素 / 炎症 / 感染 |
Research Abstract |
寄生虫感染症は特に発展途上国において重要な健康上の問題である。ビルハルツ住血吸虫はアフリカから中東にかけて分布し、膀胱癌をもたらす。寄生虫による発がんにおいては、慢性炎症が重要な役割を果たすと考えられる。炎症条件下では炎症細胞や上皮細胞から活性酸素・窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんを起こすと考えられる。本年度は、ビルハルツ住血吸虫の主な流行地であるエジプトの膀胱癌患者より生検・手術標本を得て免疫組織染色を行い、癌細胞と炎症細胞で明瞭な8-ニトログアニン生成を認めた。誘導性NO合成酵素(iNOS)およびその転写因子NF-・BおよびHIF-1・の発現も同様に認めた。以上の結果から、炎症反応によるNF-・Bおよび組織低酸素によるHIF-1・の両者の活性化により誘導されたiNOSを介して8-ニトログアニンが生成され、発がんに関与すると考えられる。8-ニトログアニンは感染・炎症関連発がんのリスクを評価する有用なバイオマーカーとして期待される。さらにタイとの国際共同研究では、胆管癌を起こすタイ肝吸虫の感染者や癌患者で尿中の酸化的DNA損傷塩基8-oxodGの量が有意に増加すること、抗寄生虫薬投与により8-oxodGが減少することを明らかにした(Cancer Epidemiol. Biomarkers. Prev.2008)。一方、タイ肝吸虫を感染させた実験動物では、抗寄生虫薬の短期投与により酸化・ニトロ化ストレスが増強して副作用に関与する可能性もあることを示した(Am. J. Trop. Med. Hyg.2008)。今後はこのような寄生虫感染による慢性炎症を介した発がんに関する研究成果を基盤とし、エジプトのビルハルツ住血吸虫において研究をさらに展開する予定である。
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